シネコラム

第518回 チャイナタウン

第518回 チャイナタウン

昭和六十三年六月(1988)
荻窪 荻窪オデヲン座

 

 アメリカ映画で時代劇といえば西部劇だが、戦前の禁酒法大恐慌の時代を描いた作品も一種の時代劇のような気がする。
 当時、パルプマガジンで活躍したダシール・ハメットレイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説。登場する私立探偵は同じ探偵でも英国の上品なシャーロック・ホームズとは違い、かなり荒っぽいのでアクション映画に向いている。
 ジャック・ニコルソン主演、ロマン・ポランスキー監督の『チャイナタウン』はそんな時代が背景のハードボイルドである。
 ロサンゼルスの私立探偵ジェイクに水道局長モーレイの妻から夫の浮気捜査の依頼が来る。さっそく引き受け密会現場の写真を夫人に渡すと、タブロイド紙にそれがすっぱ抜かれる。
 翌日、モーレイ夫人のエブリンがジェイクを訴える。が、浮気調査を依頼した女とは別人で、ジェイクは偽モーレイ夫人に騙され、モーレイのスキャンダルを暴いてしまったのだ。
 その後、水源でモーレイの溺死が確認される。事故か自殺か。エブリンはジェイクへの告訴を取り下げ、夫の死の真相を究明するよう依頼する。
 局長モーレイは実業家のノア・クロスが推し進めるダム建設に反対していた。ダムは不要であり、かえって災害の危険を増すと。が、モーレイ夫人エブリンの父親こそがノア・クロスなのだ。調査を進めるジェイクを暴漢が襲う。
 一九三〇年代のロサンゼルスの町を当時の車が走り、当時のおしゃれな服装の人々が歩く。まさにコスチュームプレイである。
 エブリン役のフェイ・ダナウェイが妖しく美しい。悪役クロスがジョン・ヒューストン。ジェイクの鼻をナイフで切る暴漢をロマン・ポランスキー監督がうれしそうに演じている。
 この映画を観たのは、今はなき荻窪オデヲン座の名作特集だった。

チャイナタウン/Chinatown
1974 アメリカ/公開1975
監督:ロマン・ポランスキー
出演:ジャック・ニコルソンフェイ・ダナウェイジョン・ヒューストンダイアン・ラッドバート・ヤング、ペリー・ロペス、ジョン・ヒラーマン、ダレル・ツワーリング、リチャード・バカリアン

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