シネコラム

第513回 オースティン・パワーズ ゴールドメンバー

第513回 オースティン・パワーズ ゴールドメンバー

平成十四年十月(2002)
大泉 Tジョイ大泉

 

 マイク・マイヤーズが英国スパイと悪の天才の二役を演じるコメディ『オースティン・パワーズ』は三本作られ、二作目の『オースティン・パワーズ デラックス』はかなりの駄作でがっかりしたが、この第三作は出だしからいきなり笑わせてくれる。
 ハイウェイをバイクで疾走する女。それを狙うヘリコプター。派手な登場でヘリを撃ち落とすオースティン・パワーズ。その顔がアップになると、なんとトム・クルーズなのだ。女が近寄りヘルメットをはずすと、グウィネス・パルトロウ。山の向こうでこれを見て指をくわえるドクター・イーブルがケビン・スペイシー。横で機関銃をぶっぱなすイーブルのミニクローンがダニー・デビート。大物スターによる配役はいったいどういうわけか。そこに「カット」の声。ハリウッドの撮影所でオースティン・パワーズが映画化されているという設定。それを見学するオースティン。監督に卑屈に笑いかけながらも一言。それをはねつける監督がスティーヴン・スピルバーグ本人。
 この贅沢なオープニングから、ミュージカル風の出だしでオースティンが歌って踊る。全体としてはタイトルの『ゴールドメンバー』でわかる通り『ゴールドフィンガー』だし、日本が出てくるのは『007は二度死ぬ』そのものだが、二作目同様の安直な悪乗り下ネタが次々と続きすぎて、一作目のセンスをなかなか超えられず。
 相棒のセクシーな女性工作員ビヨンセ。オースティンの父親の大物スパイがマイケル・ケイン。一作目を観たとき、マイヤーズのオースティンとドクター・イーブルの二役に驚いたが、今回はさらに悪役ゴールドフィンガーならぬゴールドメンバーと日本の相撲アリーナでの毛深い白人の関取役までマイヤーズがこなす。この関取は二作目のイーブルの手先のスコットランド人の肥満男とほぼ同じ。
 ラスト、スピルバーグによるハリウッド大作『オースティンプッシー』のプレミア上映でゴールドメンバー役を演じていたのがジョン・トラボルタ。オープニングとラストの豪華配役による遊びがなによりも面白かった。

 

オースティン・パワーズ ゴールドメンバー/Austin Powers in Goldmember
2002 アメリカ/公開2002
監督:ジェイ・ローチ
出演:マイク・マイヤーズビヨンセ・ノウルズマイケル・ケインマイケル・ヨークセス・グリーン