第498回 キャメロット
昭和五十四年十一月(1979)
築地 銀座ロキシー
ブロードウェイのヒットミュージカルはたいてい映画化されている。
『ウエストサイド物語』『マイ・フェア・レディ』『サウンド・オブ・ミュージック』『ラ・マンチャの男』『レ・ミゼラブル』『オペラ座の怪人』『キャッツ』などなど。そして、それらの作品は翻訳され日本人キャストでわが国の舞台でも演じられている。
そんな中で、ハリウッドで映画化されながら、日本版が上演されていないミュージカルがあるのだ。アーサー王と円卓の騎士を描いた『キャメロット』である。
私が小学生のときに観たディズニー映画『王様の剣』では、少年アーサーが石に刺さったエクスカリバーを引き抜くところまでだったが、ミュージカル『キャメロット』は晩年のアーサー王が不毛な戦闘を前にして、なにゆえこんなことになったのかと苦悶する場面から始まる。
王は楽しかったあの頃を思い出す。王妃となるグウィネビアとの森での甘い出会い。相手を許婚者のアーサーとは知らず、王に嫁ぎたくないと不満を言うグウィネビアを前にして、アーサーはキャメロットの素晴らしさを歌って聞かせる。そして、ふたりは愛し合う。理想家のアーサーは各地の騎士をキャメロットに招き、上下の差別のない円卓を囲んで、剣や槍での勝敗ではなく、法と理性による秩序を説く。
アーサーの名声に憧れ、フランスから湖の騎士ランスロットが訪れる。やがて、ランスロットと王妃の道ならぬ恋。アーサーの不義の息子モードレットが王妃の不貞を訴え、やがて国は分裂し、平和な理想世界は崩壊する。
ケネディ大統領は、このミュージカルがお気に入りだったそうだ。
なお、ブロードウェイの舞台版ではアーサー王をリチャード・バートンが、王妃をジュリー・アンドリュースが演じたとのこと。映画版のヴァネッサ・レッドグレイヴは歌は吹替だが、ぞくぞくするほど美しい。
キャメロット/Camelot
1967 アメリカ/公開1967
監督:ジョシュア・ローガン
出演:リチャード・ハリス、ヴァネッサ・レッドグレイヴ、フランコ・ネロ、デヴィッド・ヘミングス、ライオネル・ジェフリーズ、ローレンス・ネイスミス