シネコラム

第497回 リトルニッキー

第497回 リトルニッキー

平成十三年六月(2001)
有楽町 日劇プラザ

 

 最初の場面はバードウォッチングならぬ覗き魔。木の枝に腰掛け、窓越しに女性の着替えを覗いていた男、気づかれて落下し、そのまま落命、地獄へ真っさかさま。次々と落ちてくる死者たちを鬼が追い立てている。
 そろそろ一万年の任期が切れる地獄の大魔王サタン。三人の息子のうち、だれを次の魔王に選ぶか。長男のエイドリアンは冷酷で邪悪、次男のカシウスは粗暴、三男のニッキーは気弱で間抜け。結局もう一万年任期を務めることにする。
 魔王の地位をあてにしていた長男と次男は共謀して、地獄の門を凍らせ、人間界へ逃亡。地上を生き地獄にしようと企む。門を閉ざされた地獄では、死者の魂が入ってこなくなり、魔王は瀕死の重体。
 そこで、三男ニッキーが地上へ出向き、ふたりの兄を地獄に連れ戻す役目を託される。地上は恐ろしいところだが、死んでもここへ戻るだけだからと。着いたところが地下鉄の線路。あっという間に電車にひかれて地獄へ舞い戻るニッキー。もう戻ったのかとあきれる地獄の悪鬼たち。
 再び地上へ行き、悪魔犬ビーフィの案内で、売れないゲイの役者とルームメイトになり、デザインを学ぶ女子学生と仲良くなったりしながら、兄を探すニッキー。
 司祭と市長に憑依した兄たち、秩序を無視し、悪事を奨励、地上はさながら生き地獄となる。
 魔王の息子のくせに、なにゆえニッキーは心優しいのかという種明かしもあり。ふたりの兄を瓶に吸い込ませるのは『西遊記』の金角銀角の瓢箪を思わせる。
 際限なく続くギャグ。ニッキーのアダム・サンドラーをはじめ、魔王のハーヴェイ・カイテル、エイドリアンのリス・エヴァンスなど、ベテランのコメディ演技が楽しい。

 

リトルニッキー/Little Nicky
2000 アメリカ/公開2001
監督:スティーヴン・ブリル
出演:アダム・サンドラーパトリシア・アークエットハーヴェイ・カイテルリス・エヴァンス、トム・“タイニー”・リスター・Jr、ロドニー・デンジャーフィールド、アレン・コヴァート、リース・ウィザースプーン、ケヴィン・ニーロン、ジョン・ロヴィッツクエンティン・タランティーノ

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