シネコラム

第494回 ゲットスマート

第494回 ゲットスマート

平成二十年十月(2008)
新宿 新宿ピカデリー

 一九六〇年代はショーン・コネリー007の全盛期で、それにあやかったスパイものがたくさん作られ、TVでも『ナポレオン・ソロ』『スパイ大作戦』『それいけスマート』などが人気だった。中学生の私が、その中でも特に気に入っていたのがスパイ映画を茶化したコメディ『それ行けスマート』で、毎週楽しみだった。
 悪の組織と戦う合衆国の極秘スパイ組織。そのエージェントがドン・アダムズふんするマックス・スマート。優秀なのかどうか、とんでもない粗忽者。今でも覚えているのが、迫り来る敵をばんばん撃ち殺す凄腕。でもよく見たら、敵と思ったのが実は味方で、死体を前に平然ととぼけている場面など、かなり過激なジョークだった。
 一九八〇年代にアダムス主演の劇場版も作られており、衣類を消してしまうヌード爆弾というバカバカしい兵器が登場、共演が『エマニュエル夫人』のシルビア・クリステルだったとか。残念ながら未見である。
 そして二十一世紀、スティーブ・カレル主演で装いも新たに『ゲットスマート』が登場した。
 長い秘密の通路の先にある偽装電話ボックスなど、TVシリーズのギャグのセンスは、かなり残しているように思う。そして、コメディではあるが、アクション映画としての見せ場もいろいろと用意されている。
 極秘スパイ組織の裏方である情報処理係のスマートが肥満を克服し、第一線での活躍を希望するが、なかなか叶わない。悪の組織によってトップエージェントたちが次々と消され、ようやくスマートにもお鉢が回ってくる。
 相棒がアン・ハサウェイのセクシーな99号。チーフのアラン・アーキン、大統領のジェームズ・カーン、それに悪の組織のリーダーがテレンス・スタンプと配役も渋い。偽装の樹木の中に潜み続けるエージェントがビル・マーレイという遊びもあり。
 TVオリジナル版の脚本はメル・ブルックスバック・ヘンリーが担当していた。

ゲットスマート/Get Smart
2008 アメリカ/公開2008
監督:ピーター・シーガル
出演:スティーブ・カレル、アン・ハサウェイドウェイン・ジョンソンアラン・アーキンテレンス・スタンプジェームズ・カーンマシ・オカビル・マーレイ