シネコラム

第481回 エリン・ブロコビッチ

第481回 エリン・ブロコビッチ

平成十二年七月(2000)
伊勢佐木町 横浜オスカー

 

 大企業の垂れ流す有毒物質で地域の住民に多数の健康被害が発生した実話である。ジュリア・ロバーツ演じる主人公のエリン・ブロコビッチも実名で実在する。が、深刻にはならず、実話ながら喜劇色が濃厚で、娯楽映画として成功している。
 エリンはかつてミス・ウィチタに選出された美女だが、今はどん底だった。二回の結婚と離婚で幼い子供三人を抱え、失業中。信号無視スピード違反の車に交差点で追突される事故に遇いながら、裁判で敗訴。相手は往診を急ぐ医者、法廷でのエリンの派手な服装や悪態、野放図な態度が陪審員の心象を悪くしたのだ。
 窮地に陥り、楽勝だと請け合った弁護士エドワードの事務所に押し掛け、強引にアルバイトとして働きはじめる。
 エリンが雑用で整理していた土地売買交渉の書類に、なぜか住民の健康診断書が添付されている。天然ガスと電力を供給する大企業PG&E社が工場周辺の住民から土地を買い付けようとしている。それにどうして健康診断書が必要なのか。
 不審に思ったエリンは現地で住民の話を聞き、さらに疑惑を深める。健康診断はPG&E社が無料で行っているとのこと。地域で癌や不妊、様々な障害が発生している。PG&E社は工場の設備洗浄に多量のクロムを使用しているが、クロムは健康に影響しないと住民に説明している。さらに住民から土地を買い取ろうとしている。納得しないエリンのがむしゃらな調べでPG&E社が使用する六価クロムは重大な健康被害をもたらすことが判明する。エリンに説得されたエドワードは弱小事務所ながら、大企業を敵にまわして戦うことになる。
 これは大企業にだまされて苦しむ住民に味方し、訴訟を起こし、前代未聞の和解金を勝ち取った実録。シリアスにならず、コメディタッチながら、営利優先の大企業の悪辣さ、住民の苦しみがきちんと描かれ、成功している。
 エリン本人が、最初のレストランの場面でウェイトレス役でちらっと出ている。

 

エリン・ブロコビッチ/Erin Brockovich
2000 アメリカ/公開2000
監督:スティーブン・ソダーバーグ
出演:ジュリア・ロバーツアルバート・フィニーアーロン・エッカート、マージ・ヘルゲンバーガー、チェリー・ジョーンズ、ピーター・コヨーテ

 

 

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