用心棒の眼前に現れた、のっぺらぼう!
世直しを期す者と言うが、真の狙いは?
幻の剣豪チャンバラ時代小説、第二弾!
【あらすじ】
佐分利龍之助は縄暖簾で飲んでいた。
何の縁か、客の辰巳芸者・松吉こと、お隅を家まで送ることに。
人影もない夜道を歩いていると、酒の入ったふたりを狙って、突如浪人どもが現れた。
が、龍之助が馬庭念流を一閃、慌てて逃げ出した。
ゴロツキを成敗し、意気揚々となった龍之助。しかし、首筋に鋭い痛みが。
意識が薄れる中、妖艶に微笑むお隅の手に握られた、朱色の玉簪が目に入ってきた――。
どれほどの時が流れたのか、龍之助はようやく目を覚ます。
どうやら無人寺の板敷に寝かされていたらしい。
覚悟を決めた龍之助の前に姿を見せたお隅が口を開く。
「お話をさせてくださいな」
訝しむ龍之助が口をつぐんでいると、不意に障子の向こうから、六尺は優にあろうかという男がやって来た。
しかも大男は黒覆面で顔を隠しているではないか。
狢(むじな)と名乗るその大男は、
「われら、世を正さんとする仲間を募っておる」
と世直しの党入りに誘うが、龍之助は、
「天下の定法を無視するわけにはまいらぬ」
断固そう拒絶する。
金を積み、さらに説得を試みる大男に業を煮やした龍之助は、黒覆面に向けて名刀兼定を抜く!
覆面から露わになった顔は、なんと、のっぺらぼうだった!?
奇々怪々な相手を目の前にした龍之助に危機が迫る!
【登場人物】
佐分利龍之助……元高崎藩勘定方で、馬庭念流の遣い手。妻の道代を亡くし、江戸へ出、用心棒で糊口を凌ぐ。
星野謙蔵……南町奉行所の定町廻り同心。剣術はからきしの腕前だが、勤めには真剣。
佐助……星野から手札を与えられている岡っ引。「古狸の佐助」と呼ばれている。
山崎監物……馬庭念流を遣う、高崎藩の剣術指南役。東条千念斎道場の師範代でもある。
久兵衛……古着屋の主人だが、得体の知れない男。
【著者略歴】
早見 俊(はやみ しゅん)
1961年、岐阜県岐阜市生まれ。法政大学経営学部卒業。
会社員の頃から小説を執筆、2007年より文筆業に専念。時代小説を中心に著作は二百冊を超える。
「居眠り同心影御用」(二見時代小説文庫)、「佃島用心棒日誌」(角川文庫)で第六回歴史時代作家クラブシリーズ賞受賞。
『うつけ世に立つ 岐阜信長譜』(徳間書店)が第二十三回中山義秀文学賞の最終候補となる。
現代物にも活動の幅を広げ、『覆面刑事貫太郎』(実業之日本社文庫)、『労働Gメン草薙満』(徳間文庫)、『D6犯罪予防捜査チーム』(光文社文庫)を上梓。
さらにビジネス本も手がけ、『人生! 逆転図鑑』(秀和システム)を2020年11月に刊行。
日本文藝家協会評議員、歴史時代作家集団「操觚の会」副長、三浦誠衛流居合道四段。
「このミステリーがすごい」(宝島社)に、ミステリー中毒の時代小説家と名乗って投票している。
※歴史行路文庫をお読みいただくためにはKindle端末またはKindleアプリが必要です。