第431回 ローン・レンジャー
平成二十五年九月(2013)
名古屋 ミッドランドスクエアシネマ
映画はそれをいつどこで観たかという環境とともに記憶されている。西部劇『ローン・レンジャー』を観たのは名古屋駅近くの映画館で、この日、台風で東京行きの新幹線が動かず、足止めされての時間潰しだった。
子供のころ、TVで観ていた「ハイヨー、シルバー」で有名な西部劇だが、これをディズニーが豪華キャストで娯楽大作に仕上げている。
一九三〇年代のサンフランシスコ。カーニバルでワイルドウエストショーの小屋に入る少年。気高い野蛮人と書かれた老インディアンの見世物がいきなり少年に話しかける。「キモサベ」
彼が語るのが十九世紀後半の西部の物語。都会で法律の勉強をして、西部の故郷に帰ってきた青年ジョン・リードを待っていたのは、凶悪な無法者たちによるレンジャーの虐殺、暴力が法に勝る世界だった。たったひとり生き残ったジョンははぐれインディアンのトントとともに仮面のレンジャーとなって悪に立ち向かう。
西部を走る鉄道。馬上のガンマンたち。荒野の戦い。酒場の女。西部劇のお約束、馴染みの場面がきちんと盛り込まれ、コメディ風味の勧善懲悪。しかも、背景には白人によるインディアン大虐殺の歴史さえ描かれている。
主役はアーミー・ハマーのローン・レンジャーなのに、トント役のジョニー・デップが配役のトップ。かっこいい二枚目なら、だれでもローン・レンジャーにはなれるが、トントをきちんと演じられるスターはそうはいないだろう。さすがにジョニー・デップは個性派の名優である。
ともかく、『ローン・レンジャー』は台風で混雑する名古屋駅と、映画のあとに食べた味噌トンカツの味とともに記憶に残る一本である。
ローン・レンジャー/The Lone Range
2013 アメリカ/公開2013
監督:ゴア・ヴァービンスキー
出演:ジョニー・デップ、アーミー・ハマー、ヘレナ・ボナム・カーター、トム・ウィルキンソン、ウィリアム・フィクトナー、ルース・ウィルソン、バリー・ペッパー、ジェームズ・バッジ・デール