シネコラム

第429回 ラスト・アウトロー

第429回 ラスト・アウトロー

平成七年三月(1995)
池袋 文芸坐

 

 元南軍兵士の無法者たちが徒党を組んで西部を荒し回っている。首領は元南軍のグラフ大佐。かつては大牧場主で有能な軍人だったが、出征中に故郷の町が北軍の手に落ち、妻子を凌辱された上、惨殺されて人格が変わってしまったのだ。
 南北戦争終結後、昔の部下たちを引き連れて、全員が南軍の軍服を身にまとったまま、階級や規律もそのままに銀行強盗を続けている。グラフ大佐の中では戦争はまだ終わっていない。
 ある日、銀行を襲って大金を手に入れた直後、負傷した部下が足手まといになると判断し、見殺しにしようとする。
 これに副官のユースティスが反発し、大佐はかまわず負傷者を射殺しようとしてユースティスに撃たれる。
 一味は大佐が死んだと思い、そのまま捨てて行くが、実は一命を取りとめていた。胸の水筒が弾丸を受け止めて。
 銀行が雇った追跡隊に拾われた大佐は、今度は銀行の手先となって、かつての部下を追う側に回る。そして、執拗に追い詰め、陰湿に殺していくのだ。
 新しいリーダーとなったユースティスが、仕方なく部下を見捨てたり殺したりしなければならないように仕向け、自分の軍人としての正しさ、隊を守るには負傷者は見捨てなければならないと思い知らせる。
 この大佐を演じたミッキー・ローク。有能で立派な軍人が不幸によってタガが外れ、冷酷な殺人者の狂気を帯びた様が見事だった。大佐を尊敬しながらも裏切ることになる部下のユースティスは、当時まだ二枚目のダーモット・マローニーである。
 地味ながら、ニューシネマ時代の西部劇を連想させる佳作として心に残る。

 

ラスト・アウトロー/The Last Outlaw
1993 アメリカ/公開1995
監督:ジョフ・マーフィ
出演:ミッキー・ロークダーモット・マローニースティーブ・ブシェーミテッド・レヴィン、ジョン・C・マッギンレイ、キース・デイヴィッド

 

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