第427回 ハスラー
平成二十三年十月(2011)
府中 TOHOシネマズ府中
若い頃、ビリヤードに夢中になったことがある。ローテーションゲームでポケットに十五個の玉を落としていく快感。西武線の江古田駅近くに友人がいて、駅前にあったビリヤード場に彼とよく通ったものだ。その場所が周防正行監督の『shall we ダンス?』に出てきたときは懐かしかった。
映画館でなかなか出会えなかったポール・ニューマン主演の『ハスラー』を午前十時の映画祭で観られたときはうれしかった。
ある町の酒場にふたりの男が立ち寄る。近くの町で会議があり、通りかかったセールスマン。ビリヤード台があるのを見つけ、時間つぶしに勝負。若いほうがさんざん負けて、酒をあおり、熱くなっている。そして、絶対ありえないような難しい玉をポケットに落とす。
ついてたな、偶然だよ。と年配の男。いや、偶然じゃない、何度でも入れてみせるぜ、と若い男。ありえない、できる。じゃあ、賭けよう。もちろん、玉は入らず、若い男は金を取られる。
もう一度やろう、今度は百ドルだ。
明日は朝から会議だぞ。いい加減にしろ、と年配の男。すると、店のバーテンが、俺が乗ったぞ。年配の男が呆れて出て行く。しばらくして、若いほうが膨れた財布を手ににやにやしながら。このふたり、プロの勝負師だったのだ。
ポール・ニューマンふんする「早業エディ」、不敗の名人ファッツに勝負を挑み、三十時間ぶっ通しで玉を突き続け、最後には冷静な名人に手痛くやられる。彼の腕を見込んだギャンブラーの手配で富豪と一騎打ち。大金を得ても愛する女性を失う。やがて、再びファッツに挑戦するが。
エディのポール・ニューマン、二枚目であり、しかもすばらしい演技力である。
八十年代の後半に続編『ハスラー2』が作られ、にわかにビリヤードブーム。当然ながら長続きせず、ブーム以前からあったビリヤード場までが姿を消してしまった。
ハスラー/The Hustler
1961 アメリカ/公開1962
監督:ロバート・ロッセン
出演:ポール・ニューマン、ジャッキー・グリーソン、パイパー・ローリー、ジョージ・C・スコット、マイロン・マコーミック