シネコラム

第412回 バス停留所

第412回 バス停留所

平成四年八月(1992)
銀座 銀座文化

 

 昔の映画というのは、どうしてこうも面白いのだろう。
 粗暴なカウボーイのボウ・デッカーがアリゾナの都会にやって来る。ロディオの大会があるからだ。彼はそこで安酒場の女給シェリーと出会う。歌手志望の彼女はハリウッドに憧れ、田舎から出てきて、今はこの町の酒場で働いている。
 純情で単純なボウはたまたま歌っているシェリーに一目ぼれし、男の客に色目を使って売り上げを伸ばす女給の手管を自分に惚れていると思い込み、結婚を迫る。
 驚いた年上の相棒バージルはあんな安酒場の女なんか、おまえにふさわしくないと反対するが、ロディオで優勝したボウはシェリーを無理やりバスに乗せて故郷のモンタナへ連れて帰ろうとする。
 彼女はこんな田舎者との結婚なんて、考えたこともない。隙を見て逃げ出そうとしている。
 バスは大雪のため、停留所を兼ねたドライブインで動けなくなる。
 自分のことしか頭になく、シェリーの話を一言も聞こうとしないボウにバージルは言う。おまえこそ、彼女にふさわしくない。
 バージルに説教され、運転手に殴られ、ボウは反省する。反省したボウが謝ると、シェリーも彼が好きになり、いっしょに牧場に帰ることとなる。めでたし、めでたし。
 シェリー役のマリリン・モンローはこの前年の『七年目の浮気』同様、セクシーなコメディエンヌぶりを発揮している。
 ボウ役のドン・マレーはその後、TV西部劇『二匹の流れ者』で元南軍将校の賞金稼ぎ、映画『猿の惑星征服』では、悪役の独裁者を演じている。
 原作はウィリアム・インジの舞台劇で、日本ではシェリーの役を越路吹雪が演じたとのこと。

 

バス停留所/Bus Stop
1956 アメリカ/公開1956
監督:ジョシュア・ローガン
出演:マリリン・モンロー、ドン・マレー、アーサー・オコンネル、ベティ・フィールド、アイリーン・ヘッカート、ロバート・ブレイ、ホープ・ラング