明治一五一年 第19回
いくつかの目の内側を
すり抜ける私たちだから
小さな傷口が増えていく日日
の残景が過ぎていき
どろどろに流れてく体の
感触が一五一年を伝う
いつの私たちだった
壊れてしまった人の時間
かと聞きなれた声たちが流れ
荒れ果てたまま北へ流れ
いく足をなお追う足の
いくつかの目裏に晒される
朽ちいく私たちの掌を
小さな傷口がどこまでも
壊れてしまった人たちの時間
さらけ出すまで追われ
どろどろに流れていく体の
細胞の一つにまで反る
いつの私たちの血の色は
一五一年の形代を抜き
荒れ果てたまま南にまで崩れ
つづける波間だから
壊れてしまった人の時間の
いくつかの目裏の端に
写る私たちの五指だから
小さな傷口は一五一年
の終わりえない人影に緩み
どろどろに流れていく
体の破綻する刹那を語る
いつの私たちが呼ばれるそば
から傾く山脈を眺め
壊れてしまった人の時間の
荒れ果てたまま北からの
騒めく声たちの輝きを
いくつかの目の内側
から一五一年を囁く私たちと
小さな傷口は訪れる
あり得なかった眺めを留め
壊れたしまった人の時間
どろどろに流れていく
体のうすく滲む亡骸を摘む
いつの私たちであるなら
細かくなる青空を噛み
荒れ果てたまま南へと地滑り
する一五一年だから
「明治一五一年」第19回 を縦書きPDFで読む