シネコラム

第400回 スタア誕生(1954)

第400回 スタア誕生(1954)

平成九年一月(1997)
国立 国立市公民館

 

 ウィリアム・A・ウェルマン監督、ジャネット・ゲイナー主演の一九三七年『スタア誕生』は、その後繰り返しリメイクされている。最初のリメイクは一九五四年、ジュディ・ガーランド主演のミュージカル版で、当時ガーランドは三十二歳だった。
 小さなバンドのコーラス歌手エスターが、映画スターのノーマン・メインに見出され、撮影所に入り、チャンスを与えられてスターとなる。そしてノーマンと結婚。その頃から、彼はアルコール依存症が悪化して、仕事はなくなる。反対にエスターの人気は鰻昇り。ついにミュージカル映画アカデミー賞を受賞する。授賞式にノーマンは酔って現れ、観衆に向かって仕事をくれと哀願する。
 依存症治療の施設に入り、酒を抜いて退院してきたとたん、ノーマンはかつての広報担当マネージャーと喧嘩してまた酒を飲み、泥酔して警察に留置される。警察から夫を引き取り家に戻ったエスターは、訪ねてきたプロデューサーに女優を辞めて夫の面倒を見ると語る。それを聞いていたノーマン、明るい顔で、これからは健康的に生きることにする、一泳ぎして来ると言い、ガウンを脱ぎ捨て、海に入って溺死する。事故を装った自殺。この場面はウディ・アレンの『ボギー俺も男だ』でトニー・ロバーツがそっくりに演じていた。
 夫を亡くしたエスターが最後に慈善興行に出て、自分の名を著名な芸名ではなく「ミセス・ノーマン・メイン」と名乗る場面が印象深い。
 ジュディ・ガーランドは結局、この野心作で現実のアカデミー賞を取れず、失意のままに映画界から消えていく。この年の主演女優賞は『喝采』のグレース・ケリーだった。
 その後のガーランドの行く末は『ジュディ 虹の彼方に』に興味深く描かれており、ジュディを演じたレネー・ゼルウィガーはアカデミー主演女優賞に輝き、ジュディが逃したオスカーを手にすることになる。
 リメイクはその後、バーブラ・ストライサンドの『スター誕生』、レディ・ガガの『アリー スター誕生』と続き、いずれも好評である。

 

スタア誕生/A Star is Born
1954 アメリカ/公開1955
監督:ジョージ・キューカー
出演:ジュディ・ガーランド、ジェームズ・メイソン、ジャック・カーソン、チャールズ・ビックフォード、トミー・ヌーナン、ルーシー・マーロー、アマンダ・ブレイク