シネコラム

第395回 モンテーニュ通りのカフェ

飯島一次の『映画に溺れて』

第395回 モンテーニュ通りのカフェ

平成二十一年五月(2009)
飯田橋 ギンレイホール

 

 パリの賑やかな大通りの喫茶店で、ささやかながらもゆったりとすごす時間。そんな贅沢な気分が味わえる映画である。
 田舎からパリに出てきた若い女ジェシカがモンテーニュ通りでカフェの給仕の仕事につく。短髪のセシール・ド・フランスのギャルソン姿はなかなかキュート。
 ジェシカはこのカフェに出入りする三人の人物とかかわることに。コンサートを目前に控えた一流ピアニスト。舞台初日を目前に控えたTVの人気女優。生涯かけて集めた美術品のオークションを目前に控えた老コレクター。
 ピアニストは地位や名声よりも、音楽会に来ないような広く一般の人たちに音楽のすばらしさを伝えたいと願い、有能なマネージャー役の妻と不和。
 人気女優はハリウッドから新作「サルトルボーボワール」のキャスティングに来ている巨匠の前で自分を売り込もうとして失言ばかり。巨匠役がなんとシドニー・ポラック
 老コレクターは妻の死後、若い愛人を作って、息子との仲がぎくしゃくしている。
 ピアニストに朝食を配達に行ったジェシカはだれでも知っている「きらきら星」の作曲がモーツァルトだと知って驚く。
 ハリウッドの巨匠の前では女優のTVドラマを褒める。
 そして親しくなったコレクターの息子にはこんなことを言う。
「世の中には二種類の人がいる。電話が掛かってくると、チクショウ、だれだと悪態をつく人と、だれからかしらと胸ときめかせる人と」
 そして、コンサートと舞台初日とオークションが同じ日に重なり、カフェは大賑わい。
 音楽にも演劇にも美術にも疎い田舎出の彼女がみんなを幸福にし、観ている観客もいい気分になれるおしゃれなフランスコメディである。

 

モンテーニュ通りのカフェ/Fauteuils d’orchestre
2006 フランス/公開2008
監督:ダニエル・トンプソン
出演:セシール・ド・フランス、ヴァレリー・ルメルシエ、アルベール・デュポンテルクロード・ブラッスールクリストファー・トンプソン、ダニ、ラウラ・モランテシドニー・ポラックシュザンヌ・フロン

 

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