シネコラム

第383回 時をかける少女(2006)

飯島一次の『映画に溺れて』

第383回 時をかける少女(2006)

平成二十二年四月(2010)
高田馬場 早稲田松竹

 

 二〇一〇年版の『時をかける少女』を観た一か月後、たまたま早稲田松竹細田守監督特集があり、アニメ版『時をかける少女』が上映された。
 現代の東京、主人公は高校生の紺野真琴で芳山和子の姪である。もちろん、芳山和子は筒井康隆の原作小説の主人公だから、一種の後日譚とも思えるが、オリジナルとは時系列的にはつながりのないストーリーになっている。
 真琴はショートカットの活発な少女で勉強は苦手、同級生の男子、間宮千昭、津田功介のふたりと仲がよく、いつもミニスカートの制服で飛び回っている。
 ある日、理科室でふとした出来事に遭遇し、時間を遡る能力を身につける。坂道で自転車のブレーキがきかず事故に遇いそうになった瞬間、気がつくと、その日の朝に戻っている。時間が戻せることに気づいた真琴は、今度はそれを使ってしたい放題。
 叔母の和子は上野の国立博物館らしきところの学芸員で、真琴から相談されると、それは思春期の少女にありがちなタイムリープ現象だと説明する。ただし、厄介ごとを避けるために時間を戻せば、別の人に災難がふりかかるかもしれないと。
 真琴は間宮から愛を告白されると、いたたまれなくなって、時間を戻し、何もなかったことにする。友達でいたいけど、恋人になるのは避けたい。告白をなかったことにして彼を避けたために、今度は彼が他の女子を好きになる。すると、とたんに悲しくなってしまう。
 時間を遡ってもう一度やり直す能力と、乙女心をからませたもうひとつの『時をかける少女』は、東京の下町風景が丹念に描かれていて、味わい深い。実写版とはまた違う躍動感あふれるアニメーションである。
 主人公真琴の声を担当した仲里依紗は四年後、二〇一〇年実写版の主演を演じることになる。
 高田馬場細田守特集は二本立てで、もう一本は日本ののどかな田舎の風景に壮大なSFアクションが絡む『サマーウォーズ』だった。

 

時をかける少女
2006
監督:細田守
アニメーション(声)仲里依紗石田卓也板倉光隆原沙知絵