シネコラム

第379回 マンハッタン無宿

第379回 マンハッタン無宿

平成二十一年八月(2009)
京橋 フィルムセンター

 

 マカロニウエスタンで売れたクリント・イーストウッドが現代都市を舞台に活躍する刑事もの、といえば『ダーティハリー』だが、実はその前にもう一本あったのだ。ただし、現代劇とはいえ、主人公は西部劇から抜け出てきたような西部男そのものである。『マンハッタン無宿』は西部劇と現代刑事ものの中間といえよう。
 邦題の「無宿」は流れ者の賞金稼ぎを主人公にしたスティーブ・マックィーンのTV西部劇『拳銃無宿』あたりのイメージであろうか。
 アリゾナの小さな町の保安官補クーガン。型破りで、上司の保安官に持て余され、ニューヨークまで犯人引き取りの任務を押し付けられる。
 カウボーイハットに先の尖ったブーツ。会う人がみんな聞く。
「テキサスからですか」「ロデオ大会?」
 結局、犯人はLSD中毒で入院中。これをアリゾナに連れ帰るためには、病院や裁判所や様々な手続きが必要となる。クーガンは悠長にそんな手続きを待つ気はなく、病院に押しかけ、無理やり犯人を退院させて、そのまま空港へと向かう。
 が、そこを犯人の仲間に待ち伏せされて、取り逃がすことに。地元警察に非難され、それでも懲りずに、たったひとりでニューヨークの町を犯人を求めて、さまよい歩く。
 ミニスカートやゴーゴーダンスなど、当時の風俗が興味深く、保護観察官の女性との恋愛シーンもなかなか渋い。
 監督はドン・シーゲルで、おそらくは、ぶっきらぼうな一匹狼の刑事というイメージが次の大ヒット作『ダーティハリー』につながったのだろう。
『マンハッタン無宿』はTVシリーズ化されるが、『ダーティハリー』の主演が決まったイーストウッドは起用できず、西部男がニューヨークで活躍するという同様の設定で『警部マクロード』となる。こちらの主演はデニス・ウィーバーだった。

 

マンハッタン無宿/Coogan’s Bluff
1968 アメリカ/公開1969
監督:ドン・シーゲル
出演;クリント・イーストウッド、リー・J・コッブ、スーザン・クラーク、タイシャ・スターリング、ドン・ストラウド

 

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