第347回 20世紀少年
三軒茶屋には以前、映画館がいくつもあった。『20世紀少年』と『20世紀少年第2章』を二本立て通しで観たのも、この町だった。
小学生の子供たちが遊びで描いたディストピアが将来、現実化するという恐怖。
二十世紀末、謎の新興宗教が細菌兵器を使って都市を混乱に陥れ、それに乗じて政界進出を企てる。
町のコンビニ店長ケンジは小学校の同窓会でかつての仲間、原っぱで秘密基地を作って遊んだ友人達と再会。世間を騒がせ社会問題になっているカルト教団の話題が出るが、その教団のシンボルマークに見覚えがあり、ケンジは思い出す。小学生時代にみんなで考えた遊び、未来の予想図。スケッチブックに書かれた「よげんの書」では、二十世紀末に「悪のそしき」が世界征服のために動き出し、細菌兵器で都市を混乱させるという予言。そこには一九六〇年代当時の少年漫画雑誌「サンデー」や「マガジン」の内容とともに、アポロ月世界着陸や大阪万国博が反映され、その未来図を書いたのは幼いケンジだったのだ。
「よげんの書」は大阪の壊滅、羽田空港の破壊と続くが、三十年後の今、それが現実世界で実際に起きている。実行している「悪のそしき」は謎のカルト教団らしい。
教団の力が強大となり「よげんの書」が実現すると、この世界は破滅する。世界征服を企む新興宗教の教祖は、あの原っぱの秘密基地の仲間のひとりに違いない。
ケンジのもとに、今は中年となったかつての有志が集まり教団の犯罪に立ち向かう。
現実のカルト教団による犯罪事件を巧みに織り込んだストーリーの面白さに加え、配役が豪華で見応えあった。
20世紀少年
2008
監督:堤幸彦
出演:唐沢寿明、豊川悦司、常盤貴子、香川照之、石塚英彦、宇梶剛士、宮迫博之、生瀬勝久、小日向文世、佐々木蔵之介、石橋蓮司、仲村嘉葎雄、黒木瞳、ARATA、遠藤憲一、及川光博、竹中直人、森山未来、徳井優、竜雷太、光石研、津田寛治、片瀬那奈、石井トミ子、吉行和子、研ナオコ