シネコラム

第329回 テキサス魂

第329回 テキサス魂

昭和五十年六月(1975)
大阪 中之島 SABホール

 ハリウッドの二大スター、ジェームズ・スチュアートヘンリー・フォンダの共演。監督が『雨に唄えば』のジーン・ケリー。夢のような西部劇。その割には、あまり知られていない。この映画が劇場で観られたのは奇跡のようなものか。学生時代、大阪中之島にあるSABホールでは、しょっちゅう映画の特集をやっていて、どれだけ通ったことか。これもそのうちの一本である。
『テキサス魂』原題がシャイアン・ソーシャル・クラブ。
 西部の荒野で牛を追っている初老のカウボーイのジョン。これがスチュアート。彼のもとへ双子の弟が死んだので遺産相続のためシャイアンまで来てほしいとのこと。いっしょにどこでもくっついてくるのが相棒のハーレイ。これがヘンリー・フォンダ
 ふたりでシャイアンまで行くと、遺産というのが社交クラブ。実は売春宿で、堅物の兄と違って、死んだ弟はここの経営者だった。女たちは新しい主人としてジョンを歓迎する。真面目で野暮天のジョンは売春宿を閉鎖して売却しようとするのだが、相続の条件で売却不可。そこで仕方なく主人におさまるが、ここで事件。
 客のならず者が、娼婦の応対に腹を立てて、重症を負わせて立ち去ったのだ。イーストウッドの『許されざる者』にも同じような場面があった。
 ジョンは腕には自信がないが、成り行きでならず者と対決し、まったくの幸運で相手を倒す。町はジョンを英雄あつかい。ところが、殺されたならず者の身内の悪党たちが仕返しのためにシャイアンに向かっているという情報。さて、どうなるのか。
 ジョンとハーレイ、ふたりの会話が漫才のように楽しいコメディ西部劇である。
 イーストウッドが『許されざる者』を作ったとき、シャイアン社交クラブのことがどこかでひょっとして頭をよぎったとか。そう考えると、よけいに楽しい。

テキサス魂/The Cheyenne Social Club
1970 アメリカ/公開1971
監督:ジーン・ケリー
出演:ジェームズ・スチュアートヘンリー・フォンダ、シャーリー・ジョーンズ、スー・アン・ランドン、エレーン・デヴリー、ロバート・ミドルトン、アーチ・ジョンソン、ダブス・グリア