シネコラム

第309回 キャバレー

第309回 キャバレー

昭和四十七年十月(1972)
大阪 難波 南街シネマ


 第二次大戦前夜のベルリンに、作家志望のイギリス青年がやって来て、ライザ・ミネリ扮する歌手サリー・ボウルズと知り合い、恋仲になる。が、彼女は男に縛られない自由な女で、他の男とも奔放な恋をし続ける。彼は裕福なユダヤ人の家に英語の家庭教師として雇われ、やがてナチスが台頭する。作家としてカメラのようにそれらを見続け、彼はイギリスへ帰り、彼女はベルリンのキャバレーに残る。
 原作はクリストファー・イシャーウッドの小説『さらばベルリン』、それを戯曲化したジョン・ヴァン・ドルーテンの『私はカメラ』、さらにそれをミュージカル化したブロードウェイの舞台『キャバレー』、それらを踏まえた映画化である。
 映画はライザ・ミネリの魅力全開で、彼女の歌う『Mein Herr』『Cabaret』、ミネリとジョエル・グレイの『Money, Money』など、歌も振り付けも堪能させるが、ほとんどはキャバレーキットカットクラブでのショーの場面となっており、ショー以外の現実の場面では歌わない。形式としては、登場人物がせりふを歌うミュージカルではなく、ショーの場面がふんだんに入ったストレートプレイである。
 ヴァン・ドルーテンの戯曲をそのまま映画化した『嵐の中の青春』をその後、京橋のフィルムセンターで観る機会があったが、ライザ・ミネリの素晴らしい歌と踊りを観たあとでは、サリーを演じたジュリー・ハリスが全然印象に残らなかった。
 日本では舞台を戦前の中国に変えた翻案劇のミュージカル『洪水の前』が作られ、秋川リサが主演だった。


キャバレー/Cabaret
1971 アメリカ/公開1972
監督:ボブ・フォッシー
出演:ライザ・ミネリマイケル・ヨーク、ヘルムート・グルーム、ジョエル・グレイ、マリサ・ベレンスン

 

嵐の中の青春/I Am a Camera
1955 イギリス/公開1957
監督:ヘンリー・コーネリアス
出演:ジュリー・ハリス、ローレンス・ハーヴェイ、シェリー・ウィンタース

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