シネコラム

第296回 ロスト・イン・ラ・マンチャ

第296回 ロスト・イン・ラ・マンチャ

平成十五年十二月(2003)
池袋 新文芸坐


 TVのモンティ・パイソンは英国BBCのお笑い番組で、オックスフォードとケンブリッジ出身の五人の秀才が自作自演で相当におふざけのギャグを演じていた。これにナンセンスなアニメーションで加わっていた六人目のアメリカ人がテリー・ギリアムである。
 その後、ギリアムは映画監督として成功し、『バンデットQ』『未来世紀ブラジル』『バロン』『フィッシャー・キング』『12モンキーズ』などなどで才人ぶりを発揮し続ける。
 テリー・ギリアムが長年温めていた『ドン・キホーテを殺した男』の撮影に入ったのが西暦二〇〇〇年。二十世紀の最後の年である。
 主演にジョニー・デップドン・キホーテにはフランスの名優ジャン・ロシュフォールが配役された。ストーリーは現代人のデップが過去のスペインにタイムスリップしてドン・キホーテに出合うというもの。
 撮影はスペインで行われたが、現場のすぐ近くにある軍事基地の騒音に悩まされ、間もなく大雨と洪水で機材がだめになる。ギリアムは凝り性で妥協を知らず、どうでもいいと思われるような細部にも莫大な予算を注ぐ。そして不運なことに、ドン・キホーテ役のジャン・ロシュフォールがヘルニアで入院。その間もどんどん出費がかさみ、とうとう出資者が手をひいて実現不能となった。
ロスト・イン・ラ・マンチャ』はギリアム監督の新作『ドン・キホーテを殺した男』のメイキングになるはずだったが、本編が実現せず、メイキングだけが公開されるという不思議なドキュメンタリーである。結局、テリー・ギリアムこそがドン・キホーテであったという話。


ロスト・イン・ラ・マンチャ/Lost in La Mancha
2001 アメリカ・イギリス/公開2003
監督:キース・フルトンルイス・ペペ
ドキュメンタリー

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