シネコラム

第293回 芳華

第293回 芳華

令和二年一月(2020)
西東京 保谷こもれびホール


 一九七〇年代、文化大革命末期から中越戦争までを人民解放軍に属する芸術部門「文工団」を中心に描いた中国の現代史。美しくも切ない青春映画である。
 最初、いきなり毛沢東中国共産党を礼賛する舞踊で始まるので、どうなるのかと思ったが、この若い美女たちによる舞踊の練習風景が実に見事なのだ。
 地方から新人として入隊した少女シャオピン(小萍)。父親が文化大革命で投獄され、再婚した母や継父や妹弟から差別されいじめられた過去があり、人民解放軍の軍服を着ることが夢だった。文化大革命は多くの知識階級に不幸をもたらしたが、解放軍文工団の隊員はダンサーでありミュージシャンであると同時に、軍人でもあるのだ。稽古場で舞踊や演奏の猛練習をしながら、同時に軍事訓練も受け、若い彼らは友情を育む。差別やいじめ、恋愛なども交えながら。
 模範兵と呼ばれ、仲間の雑用をひとり引き受け、自分のことよりみんなのために働く善意の塊のような隊員リウ・フォン(劉峰)。善良で誠実な彼は恋愛問題で誤解を受け、勃発した対ベトナム戦である中越戦争の最前線に送られる。それに抗議したシャオピンもまた、従軍看護婦として最前線へ。
 戦争は終わり、やがて文工団も解散し、隊員たちもばらばらとなる。そして彼らの青春も終わる。
 なによりも、文工団の舞台の再現が見事ですばらしい。兵士を慰問し鼓舞する文工団には中国全土から舞踊や演奏の才能ある若き美男美女が集められたとのこと。この映画もまた、女優が全員、長身で顔立ちの整った美女ぞろい。劇中劇の踊りも完璧なのだ。
 一九七〇年代、今思えば、ちょうど私の青春時代と重なる。


芳華/芳華
2017 中国/公開2019
監督:フォン・シャオガン(馮小剛)
出演:ホアン・シュエン(黄軒)、ミャオ・ミャオ(苗苗)、チョン・チューシー(鐘楚曦)、ヤン・ツァイユー(楊采鈺)