シネコラム

第277回 ビッグ

第277回 ビッグ

平成十一年三月(1999)

調布 グリーンホール小ホール

 年齢とともに貫禄のある役が多くなったトム・ハンクスだが、若い頃はけっこう軽い喜劇に主演していた。中でも私が好きなのが『ビッグ』である。
 十二歳のジョシュは好きな女の子にガキなんて相手にしないと馬鹿にされる。悔しくて、たまたま町に来ていたカーニバルの願い事マシーンにコインを入れて祈る。ぼくを大きくしてください。
 翌朝、目覚めると願いが叶っていた。息子の部屋を覗いた母親、変な男がいるので、びっくりして大騒ぎ、あわてて逃げ出す。カーニバルまで行くと、すでに別の巡業先に移動している。なんとか探し当てて、願い事マシーンに元の子供に戻してもらわなくては。だが、どうすればいいのか。
 見知らぬ男が現れ、息子がいなくなったことで、誘拐事件と思い込んだ母親が警察に通報。もう家には戻れない。ともかく親友ビリーのところへ行く。最初は不審者と思って逃げるビリーだが、二人の秘密の合言葉があって、それを言うと、外見は大人だがジョシュなんだとわかる。子供には不思議を信じる力があるのだ。
 大人には仕事が必要だ。ビリーの助言で玩具会社の求人広告を見つける。子供が何を欲しがっているか、それを知っているのは子供である。アイディアが認められ、就職が決まり、社長に気に入られて、あっという間に若手重役に。
 玩具会社の同僚スーザンは、いきなり現れて出世するジョシュに敵意を抱くが、彼のあまりに純朴な心根に打たれ、恋心が芽生える。いつまでも少年の心を失わない男というのは女性にとって魅力なのだ。大人の女性との初めての恋愛。が、根が子供だから二人の関係はぎくしゃく。
 ビリーの奔走で、やがてカーニバルの巡業先がわかるのだが……。なんとも切ないラストシーン。この時期のトム・ハンクス、ほんとに大人子供に見える。そして、スーザンのエリザベス・パーキンス、きれいだった。

 

ビッグ/Big
1988 アメリカ/公開1988
監督:ペニー・マーシャル
出演:トム・ハンクスエリザベス・パーキンス、ロバート・ロッジア、ジョン・ハード、マーセデス・ルール