シネコラム

第229回 テルマエロマエ

第229回 テルマエロマエ

平成二十四年三月(2012)
日比谷 東宝試写室

 紀元二世紀の初め、ローマの大浴場を設計した建築家ルシウスは、依頼人から斬新さに欠けると文句をつけられ、悩んでいた。どうしたら画期的な浴場が作れるのか。悩んだ末に、浴場の湯に頭まで浸かる。なにやら底のほうでぶくぶくと渦が巻いていて、あっという間に吸い込まれ、顔を上げると、平たい顔の異民族たちがくつろぐ浴室。
 ローマ帝国が征服して連れ帰った奴隷たちが彼らの技術で作った浴室だろうか。目を瞠るルシウス。壁面に描かれた巨大な風景画。並んで腰掛け蛇口の湯を桶で受ける洗い場。浴室の外には脱衣かご。そしてミルクと果汁の混ざった冷たい飲み物。異民族の奴隷たちが、なにゆえ、これほどの技術を持っているのだろう。
 実は、古代ローマの浴場の底が、二十一世紀の東京の銭湯につながっていたという凄い出だし。
 気を失って、目覚めると、ルシウスは再び、ローマの大浴場にいた。夢だったのか。でも、彼の手にはフルーツ牛乳のガラス瓶が。
 やがて古代ローマ帝国に日本の銭湯のアイディアを取り入れた大浴場が出現する。
 皇帝ハドリアヌスは画期的な大浴場の評判を聞き、ルシウスを召して、皇帝のための浴室設計を命じる。
 またまた悩むルシウス。そして、悩むたびに、彼は二十一世紀の日本にタイムスリップ。あるときは家庭の浴室。あるときは浴室のショールーム。あるときは東北の温泉と。
 そこには常にひとりの女性がいた。仕事に悩む漫画家志望の若い女性。ルシウスと彼女の間に恋が芽生え、古代ローマ現代日本を行ったり来たり。傑作タイムスリップ浴場コメディに大爆笑。阿部寛は体格も顔立ちも古代ローマ人に見える。

テルマエロマエ
2012
監督:武内英樹
出演:阿部寛上戸彩北村一輝竹内力、宍戸開、笹野高史市村正親