シネコラム

第226回 タイムライン

第226回 タイムライン

平成十六年一月(2004)
有楽町 日劇

 マイケル・クライトンの原作が早川書房からハードカバー上下二冊で出たとき、あまりの面白さにむさぼるように読んだ。映画化を待ち望んでいたが、やはりあれだけの原作を二時間の映画にまとめるのは難しい。結局はアクションSFの類型で、あまりいい出来とはいえない。
 アメリカのコンピュータ企業が、物質をデータ化して転送する装置を開発中、消えた物質が別の時間に移動したことが判明し、これをもとにして時間移動装置を作る。
 若い考古学者のグループが呼ばれ、中世ヨーロッパへ行ったまま行方のわからなくなった教授を助け出すことに。
 原作では、この時空を越えた冒険物語が、クライトンの百科事典的知識の羅列によって、リアリティを帯びる。物質転送の理論から、現代英語と中世英語の違い、騎士の体格や馬上試合の方法まで。考古学者たちを待ち受ける中世の悪武将の正体も実にいい。
 映画は予算の関係からか馬上試合も出てこないし、映像的に難しい中世語との翻訳装置も使われていなかった。
 配役は若き考古学者がポール・ウォーカージェラルド・バトラー、教授がビリー・コノリー、中世の領主がランベール・ウィルソン、コンピュータ企業のやりて社長がデビッド・シューリス
 小説と映画は別ものだから仕方がないが。悪役もぱっとしない。これは絶対にすごい映画になるぞ、と思ったのだが、期待が大きすぎたようだ。

タイムライン/Timeline
2003 アメリカ/公開2004
監督:リチャード・ドナー
出演:ポール・ウォーカージェラルド・バトラー、フランシス・オコナー、ランベール・ウィルソンデビッド・シューリスビリー・コノリー