第224回 13ウォーリアーズ
平成十二年二月(2000)
有楽町 ニュー東宝シネマ1
マイケル・クライトンの『北人伝説』は早川書房から翻訳が出されたとき、すぐに読んだ。とても好きな小説だが、なかなか映画化はされなかった。そして、ようやく公開されたのが低予算の超B級アクション。もちろん、映画化されただけで、私はうれしいが。
時代は十世紀。中世の文明国イスラム圏から野蛮な未開地へ派遣された詩人のイブン・ファドランは、タタール人に襲撃されかけるが、タタールよりもはるかに野蛮で恐ろしい連中が現れて救われる。その蛮族こそ、白い肌、青い目、金髪の大柄な男たち。つまり白人種。当時のヨーロッパ人は先進国のアラブ人から見ればなにからなにまで非文明的だった。その白人の中でも特に獰猛な北欧のバイキングたち。彼らは酒に酔い、ちょっとした喧嘩で相手を斬り殺し、女をはべらせ、唾を吐き散らし、まあ、不潔で野蛮この上ない。
そのバイキングたちの元へ祖国から使者が来る。北欧の地が魔物に襲われ滅ぼうとしているので、助けを求めて来たのだ。占いの老婆によって十三人の勇士が選ばれる。十三番目には異国の男を加えよ。つまりイブンである。断ると命はないので、渋々バイキングたちと北欧まで旅することになる。蛮族との旅を嘆いてアラーの神に祈るイブン。
アメリカ映画なので、主人公のアラブ人イブンは英語を話す。そしてバイキングたちはわけのわからない未開の言語をしゃべる。いったいどうなるのだろう。ところが、イブンは旅を続けるうちに、だんだんと白人たちの言葉を覚えて行く。その過程でだんだん白人たちの言葉が英語に近くなって行き、とうとう彼らの言葉が英語になった時、イブンは彼らの言葉を習得したという設定。なるほど、こういう映画的手法もあったのか。
北欧で彼らが戦う魔物たち。原作ではこの魔物たちは人を食う怪物、つまり、大古の旧人類(ネアンデルタールだろうか)の生き残りが人食い鬼として中世まで生存していたという話。映画はその怪物の造形が手抜きで、ちょっと残念な出来栄えだった。
13ウォーリアーズ/The 13th Warrior
1999 アメリカ/公開2000
監督:ジョン・マクティアナン
出演:アントニオ・バンデラス、オマー・シャリフ、ウラジミール・クリッチ、ダイアン・ヴェノーラ