シネコラム

第215回 サリヴァンの旅

第215回 サリヴァンの旅

平成六年六月(1994)
銀座 テアトル西友

 

 銀座のテアトル西友で開催されたプレストン・スタージェス祭。その中で一番気に入ったのが『サリヴァンの旅』である。アメリカがまだ不況の一九四一年の作品。
 主人公のサリヴァンは著名な映画監督で娯楽映画の名手だが、失業者が町に溢れているときに面白おかしい娯楽なんか作っている場合じゃない。急に意識に目覚めて社会派作品を撮ろうとする。映画会社の重役たちは驚き、猛反対。社会派映画なんて絶対にヒットしない。金持ちで若い内から成功を修めた君に貧乏人の映画なんて作れないと言う。それもそうだと、サリヴァンは底辺を取材するため浮浪者の衣裳を着て不況下の各地を放浪する。ヒッチハイクで最後にやって来たハリウッドで、ひとりの美女にコーヒーを奢ってもらう。彼女は女優への夢破れて故郷に帰るところだった。
 サリヴァンの正体がばれて、今度は女優志望の彼女とふたりで浮浪者となり、貨物列車に乗り込んだり、貧民街をうろついたりして社会勉強をする。いよいよ社会派作品に取り組むが、自分が題材を得られた礼に浮浪者たちに施して歩く。いい気なものだと思うが、金を配っているサリヴァンに目をつけた浮浪者に襲われて、服も靴も金も全部盗まれ、貨物列車に投げ込まれる。
 気がついたら知らない町で、記憶もなくしており、只乗りに怒りを燃やす車掌と喧嘩し、相手を傷つけて六年の重労働刑の宣告を受け、刑務所へ。記憶が戻ってからも、自分が高名な映画監督とは信じてもらえず、毎日強制労働させられる。囚人たちと鎖につながれたまま観た刑務所内の映画上映会。ミッキーマウスに涙を流して大笑いする囚人たち。いっしょになって笑うサリヴァン。彼は悟るのだ。真に愉快な娯楽映画こそが大衆の心を豊かにすると。
 さて、彼はどうやって、刑務所から抜け出すのか。そして無事にヴェロニカ・レイク扮する女優志望の彼女と結ばれるのか。
 余談だが、一九四〇年代を背景にした『LAコンフィデンシャル』でキム・ベイシンガーが演じる娼婦はヴェロニカ・レイク似を売りものにしていた。

 

サリヴァンの旅/Sullivan’s Travels
1941 アメリカ/公開1994
監督:プレストン・スタージェス
出演:ジョエル・マクリー、ヴェロニカ・レイク、ロバート・ワーウィック