映画批評

第213回 サンセット大通り

第213回 サンセット大通り

昭和六十二年二月(1987)
新宿 コマ東宝

 

 ハリウッドの映画業界を描いた映画はたくさんあるが、中でも私が一番好きなのがビリー・ワイルダー監督の『サンセット大通り』だ。
 プールに男の死体が浮かんでいる。そこからナレーションが始まり、彼がなぜ浮かんだのかが語られる。
 売れないシナリオライター、ジョー・ギリスは借金取りに追われ、空き家と思って逃げ込んだのがサイレント時代の大スター、ノーマ・デズモンドの屋敷だった。
 ノーマは突然飛び込んできた若い男がなかなかの美男で、しかもシナリオライターだと知り、自作脚本のリライトを依頼する。世間から忘れられていても、かつての大スター、今でも大金持なのだ。そしてノーマに恭しく仕える無愛想な執事のマックス。
 ジョーはノーマの主演作『サロメ』の脚本に手をいれることに。仕事さえしていれば、借金取りからは逃れられ、食べるのに困らない。そしてとうとう、彼はこの初老の大女優の若いツバメとなってしまう。豪華な食事、最高級の古風な洋服、夜になると屋敷内の映写室で彼女のサイレント時代の主演作をふたり並んで鑑賞する。スクリーンの中で神々しく輝く美女ノーマ・デズモンドも、今は見る影もなく、新作『サロメ』は彼女が思い込んでいるだけで、どこの撮影所からも依頼はないのだ。
 むしゃくしゃして屋敷を飛び出し、一杯ひっかけようと映画関係者のたまり場に足を向けると、そこには自分と同世代の、仕事はなくても夢のある連中がたむろしている。彼は撮影所の脚本部にいる若い女性と意気投合し、新しいシナリオについて語り合う。必要なのは美しい人生だ。
 やがて、プールに浮かぶジョー・ギリスの死体。
 大女優ノーマ・デズモンドを等身大で演じたのが実際にサイレント時代の大女優であったグロリア・スワンソン。執事マックスを演じたのがやはり往年の名監督エリッヒ・フォン・シュトロハイム。パーティの客にはバスター・キートンも顔を見せる。

 

サンセット大通り/Sunset Boulevard
1950 アメリカ/公開1951
監督:ビリー・ワイルダー
出演:ウィリアム・ホールデングロリア・スワンソンエリッヒ・フォン・シュトロハイム、ナンシー・オルスン、セシル・B・デミル、バスター・キートン