シネコラム

第201回 新幹線大爆破

第201回 新幹線大爆破

昭和五十年九月(1975)
京都 一乗寺 京一会館

 

 昭和五十年七月の封切りだが、ヒットせず、私は二か月後に二番館に回ってきたのを三本立てで観た。国鉄新幹線の東京博多間が開通したのがこの年の三月で、映画は開通したばかりの新幹線を爆破しようというパニックものである。だから、撮影に関して、当時の国鉄はまったく協力しなかったそうだ。
 犯人グループが新幹線に爆弾を仕掛ける。速度計と起爆装置を連動させたもので、時速が八十キロを超えると第一のスイッチが作動し、八十キロより落ちると第二スイッチで爆発する。いったん動きだすと、列車を止めて爆弾を取り除くことはできない。北海道の貨物列車にも同様のものを仕掛けて爆破させ、予告が本当であることを証明する。犯人の要求は五百万ドル。金と引き換えに爆破装置の外し方を教えるという。
 東京を出発した新幹線ひかり一〇九号は止まらずに走り続ける。乗客は千五百人。指令室からの電話で爆破予告を知った運転士は、ぎりぎりに減速しながら走行する。最新の新幹線には安全装置が完備してあり、わずかなトラブルでも自動的に停止する仕組みなのだ。次々起きるアクシデント。名古屋を過ぎても止まらないのでだんだんパニックになっていく乗客。当時は東京駅の次は名古屋だった。
 限られたわずかな時間で犯人を割り出し追い詰める警察。政府は爆弾の除去が成功しなくても都市での爆破を避けるため、山口県の農村部での停止を国鉄に要請する。
 この手のパニック映画は最後はなんとか無事に切り抜けるものだが、今にも爆発しそうで、ひょっとして大惨事もあるのかと、最後まで画面に食い入ってしまった。
 興行的にヒットはしなかったが、評論家の評価が高く、それまでヤクザ映画が多かった佐藤純彌監督がその後、数々の大作を撮るきっかけとなった。
 フランスで短縮版が大ヒットし、アメリカ映画『スピード』では同様のアイディアが使われている。

 

新幹線大爆破
1975
監督:佐藤純彌
出演:高倉健山本圭織田あきら宇津井健千葉真一、郷鍈治、竜雷太宇津宮雅代藤田弓子、多岐川裕美、志穂美悦子渡辺文雄、福田豊土、志村喬、山内明、鈴木瑞穂丹波哲郎北大路欣也川地民夫田中邦衛