映画批評

第193回 トゥルーマン・ショー

第193回 トゥルーマン・ショー

平成十年十二月(1998)
新宿 新宿ピカデリー1 

 

 このアイデアだけで観たくなった。
 ひとりの赤ん坊が生まれる。名前はトゥルーマン。そして彼の主演するTVドラマ『トゥルーマン・ショー』が始まる。母親も父親も友人もすべてが役を演じるプロの俳優。巨大なセットの町で無数の隠しカメラで撮影されながら、トゥルーマンの人生が即興のドラマとして描かれ、全国に放送される。知らないのは本人だけ。虚構のドラマが彼にとっては現実の人生そのものなのだ。
 全国の視聴者は彼のすべてを知っている。が、彼は自分を平凡な保険会社の社員だとしか知らない。彼の生活の一部始終、友人や妻との会話、悩みまでが視聴者を楽しませる。当然スポンサーがあるので、会話の途中でも妻が商品をそれとなく紹介するコマーシャルが入る。
 即興だから何が起こるかわからない。プロの俳優と現場のスタッフがこれをうまく切り抜けてきた。セットの町を覆うドームの頂上で、それを指揮しているのが、神になったつもりのプロデューサー。
 トゥルーマンは、やがてこの不自然さに気がつき、町を出ようとする。様々な妨害が仕組まれる。その裏をかき、彼はついに世界の果ての壁に辿り着く。長寿番組は終わりを告げ、視聴者はトゥルーマンに拍手を送る。
 これだけのすごいアイデア、もっと時間と予算をかけて凝った作りにすれば、文句なしによかったのに。そこがちょっと惜しい。
 昔、アメリカのTVの単発ドラマの中に出てきたシーン。主人公がヒッピーの上演しているミニシアターを観にいく。舞台の上で若い夫婦が会話しているのだが、実はそれは現実の夫婦で、夫婦生活そのものを二十四時間、観せているだけとのこと。ふとそんなことを思い出した。

 

トゥルーマン・ショー/The Truman Show
1998 アメリカ/公開1998
監督:ピーター・ウィアー
出演:ジム・キャリーローラ・リニーノア・エメリッヒエド・ハリスナターシャ・マケルホーン