第177回 ゴジラ キング・オブ・モンスターズ
令和元年六月(2019)
新所沢 レッツシネパーク
ハリウッド版のゴジラ映画は一九九八年にローランド・エメリッヒ監督の『GODZILLA』、二〇一四年にギャレス・エドワーズ監督の『GODZILLA ゴジラ』が公開されたが、どちらも私は気に入らなかった。いったいどこがゴジラなんだ。という不満だけが残ったのだ。
それで三作目の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』には大して期待しなかった。ところがである。まず、映画として面白かった。世界各地で大型生物が出現する。これは地球を汚染し環境を悪化させている元凶の人類を駆逐するため、自然そのものが大古の生物たちを蘇らせたという設定。ゴジラだけでなく、モスラ、ラドン、ギドラなどが次々目覚める。怪獣を攻撃して退治しようとする軍隊、それに反対し怪獣の生態を研究し共存をはかろうとする学者組織、そこに怪獣を利用して人類滅亡を企てる狂信的な環境テロリストグループが入り乱れる。
子供の頃にゴジラやモスラに夢中になった世代にとって、なによりうれしいのは、前二作のハリウッド版と違い、本作は東宝怪獣シリーズへのオマージュになっており、オリジナル版への敬意が感じられることだ。
ゴジラやモスラが登場する場面では、懐かしいテーマ曲が流れ、それだけで私の世代はわくわくする。
渡辺謙扮する芹沢猪四郎博士は重要な役だが、『ゴジラ』第一作で平田昭彦が演じた芹沢博士と初代監督の本多猪四郎の名前を組み合わせている。
三つ首のギドラと戦って不利なゴジラにモスラが加勢するのは、昔の東宝怪獣バトルそのもの。あの東宝怪獣映画を最新のCG技術とハリウッドの贅沢な資本で再現したらこうなるのか。大人も満足できる出来栄えである。
おもちゃそのものの戦闘機が着ぐるみの怪獣にぶつかっていく昔の特撮も、私は決して嫌いではないが。
ゴジラ キング・オブ・モンスターズ/Godzilla: King of the Monsters
2019 アメリカ/公開2019
監督:マイケル・ドハティ
出演:カイル・チャンドラー、ベラ・ファーミガ、ミリー・ボビー・ブラウン、渡辺謙、サリー・ホーキンス、チャールズ・ダンス、チャン・ツィイー