第175回 僕たちのラストステージ
令和元年五月(2019)
舞浜 シネマイクスピアリ
サイレント時代のチャップリンやキートンは何度かリバイバル上映で観る機会があったのだが、一九三〇年代のハリウッドで大人気だった極楽コンビのローレルとハーディの作品は残念ながら映画館では未見である。
今回の新作『僕たちのラストステージ』はローレルとハーディが主人公。戦後、映画出演の仕事もさっぱりなくなり、興行主の誘いにのって、英国各地を巡業した晩年の実録。
安ホテル、小さな劇場、まばらな観客。中にはふたりの実演を見て驚く観客もいる。まだ現役だったのかと。
町では売れっ子凸凹コンビ、アボットとコステロの新作映画の大きな絵看板。それを寂しく見上げるローレル。彼が脚本を書きロンドンの映画会社に売り込もうとするロビンフッドのコメディは見込みなし。
それでもふたりの芸は健在で、行く先々で観客は大笑いしてくれる。アメリカからそれぞれの妻を呼び寄せ、だんだん客の入りもよくなり、待遇も改善される。
スコットランドでの大成功。大入り満員の客席を沸かせ、いよいよロンドンの大劇場に進出が決まる。が、その矢先にハーディが心臓発作で倒れる。チケットの売れ行きはよく、舞台に穴はあけられないので、興行主は代役を提案。ローレルは渋々承諾するのだが。
病気を押さえ、命がけで滑稽なダンスを踊り続けるハーディ。大爆笑の客席の中で、ひとり涙をこらえながら見ているハーディの妻ルシール。
痩せて小柄なスタン・ローレルと太って大柄なオリバー・ハーディ。ローレル役のスティーブ・クーガンは表情がそっくり。ハーディを熱演したジョン・Ⅽ・ライリーはほとんど首のない二重顎まで生き写し。一九五〇年代の英国の風景も美しい。
ローレルとハーディの短編映画は今ではインターネットなどで観ることができる。
僕たちのラストステージ/Stan & Ollie
2018 イギリス・カナダ・アメリカ/公開2019
監督:ジョン・S・ベアード
出演:スティーブ・クーガン、ジョン・C・ライリー、ニナ・アリアンダ、シャーリー・ヘンダーソン、ダニー・ヒューストン、ルーファス・ジョーンズ