シネコラム

第159回 ジェイ&サイレント・ボブ帝国への逆襲

第159回 ジェイ&サイレント・ボブ帝国への逆襲

 

平成十五年八月(2003)
新橋 新橋文化

 映画マニアあるいはオタク、フリーク、コレクター、彼らの好むジャンルというのは、アニメーション、SF、オカルト、ホラーなどで、あまり文芸大作のオタクとか、社会派のフリークというのは聞かない。それでも、私の知人に社会派映画を異様に好む生真面目な熱血漢がいて、ちょっと描写が甘かったりすると、こんなもんじゃないよ。と怒り出す。彼はコメディはまったく認めない。あんなもん、嘘ばっかりだと言って。で、コメディが嫌いなくせに、もっと嘘ばかりの宇宙SFがけっこう好きだったりするから不思議な人だ。
 さて、『ジェイ&サイレント・ボブ帝国への逆襲』は、映画マニアのお遊び映画。ジェイとサイレント・ボブは自分たちをモデルにしたコミックが知らないうちに映画化されることになり、さんざんコケにされているので、撮影阻止のためハリウッドに乗り込む。その途中で知り合った動物虐待反対運動の女四人組に頼まれて、製薬会社から実験動物を逃がす手伝いをしたり。
 有名映画のパロディシーンも豊富。下品ギャグも豊富。スターや監督も実名で出演。中年となったマーク・ハミルが『スターウォーズ』を茶化した宇宙活劇のシーンに悪役で登場したり。ベン・アフレックマット・デイモンが『グッドウィルハンティング2・狩りの季節』という続編を撮影中で、監督のガス・ヴァン・サントは全然やる気がなく、アフレックとデイモンはお互いのハリウッドメジャー作品をやり玉にあげてけなし合う。
 マニア向きのお遊び映画というのはマニア以外にはほとんどどうでもいいような内容なので、まずヒットはしないし、下手をすると劇場公開されず、DVD発売やネット配信のみで終わる。
 私の知人の熱血漢氏、この映画、全然わからなくて、あまりにつまらなくて、怒って途中で映画館を出たという。それでも私は彼に一目置いている。こんな映画でもちゃんと封切時に映画館へお金払って観に行く人だから。もっとも彼はシリアスな宇宙SFの新作と勘違いしたらしいが。

 

ジェイ&サイレント・ボブ帝国への逆襲/Jay and Silent Bob: Strike Back
2001 アメリカ/公開2003
監督:ケヴィン・スミス
出演:ジェイスン・ミューズ、ケヴィン・スミスベン・アフレック