シネコラム

第137回 おかしなおかしな訪問者

第137回 おかしなおかしな訪問者

平成六年三月(1994)
池袋 文芸坐

 

 タイムスリップものにもいろいろあるが、フランスコメディ『おかしなおかしな訪問者』ではタイムマシンではなく魔法で時を超える。
 場面は中世ヨーロッパ。豪傑伯と異名をとる勇猛果敢な騎士ゴッドフロワは悪い魔女の奸計で許嫁の父である公爵を誤って殺してしまう。許嫁は父の仇とは結婚できないと修道院に入り、ゴッドフロワは公爵を生き返らせるために森に住む魔法使いに依頼する。魔法使いの調合した薬で時の回廊を遡り、公爵殺害を阻止しようというのだが、手違いで従僕ジャックイユともども間違った時代へと飛んでしまう。
 意識を取り戻し、森を抜け出た騎士と従僕は黒人の運転する黄色い郵便自動車に出会い、戦いを挑む。頭上には飛行機が飛んでいる。彼らは二十世紀末へとやってきたのだった。
 城は今では、ホテル業者の手に渡っており、エリート歯科医の妻となっている子孫に出会う。彼女はゴッドフロワを行方不明の従兄弟だと思い、世話をする。
 従僕ジャックイユは主人にこきつかわれる中世よりも、自由な現代が気に入って、過去には帰りたがらない。横柄で気取り屋のホテルオーナーのジャッカールが従僕ジャックイユと瓜二つ、どうやら従僕の子孫らしい。
 徹底したドタバタコメディではあるが、変な部分でリアルなのもうれしい。騎士も従者も自動車に乗ると乗り物酔いで吐いてしまう。入浴の習慣がないから、現代人からみるとホームレスのごとく臭かったりする。由緒ある伯爵家の末裔が歯を治す平民の職人と結婚しているので騎士が憤慨したり。
 続編『ビジター』では、また中世から現代へやって来るし、ハリウッドではリメイクの『マイ・ラブリー・フィアンセ』が作られ、ジャン・レノとクリスチャン・クラヴィエが同じ役を英語で演じている。

 

おかしなおかしな訪問者/Les Visiteurs
1992 フランス/公開1993
監督:ジャン=マリー・ポワレ
出演:ジャン・レノ、クリスチャン・クラヴィエ、ヴァレリー・ルメルシェ

 

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