シネコラム

第71回 猿の惑星

第71回 猿の惑星

昭和四十三年六月(1968)
大阪 上本町 上六映劇

 

 中学生の半ばまでは、映画館には父か祖母に連れられて行っていたのだが、中学三年生のとき、『猿の惑星』が公開され、父も祖母も子供だましと言って、観たがらない。どうしても観たい私は初めて友人二人を誘い、子供だけで観に行ったのだ。
 六十歳を過ぎて、大阪で中学校の同窓会があり、Ⅿ君と再会した。いっしょに『猿の惑星』を観た友人だ。もうひとりのY君は、亡くなったとのこと。あれから五十年以上、十代の少年は六十代の老人になっていた。
 チャールトン・ヘストン扮する宇宙飛行士テイラーが仲間と宇宙探索の旅の末、地球とそっくりの惑星に降り立つ。人工冬眠機の故障で女性隊員がミイラになっているというショッキングな始まり。宇宙船の中で飛行士たちは長期間眠り続けていたのだ。
 その星は大気も気温も地球と変わらない。人間そっくりの原始人たちが木の実を食べている。彼らが唯一の知的住民なら、俺たちで簡単に征服できる。
 そこへ馬に乗った兵士の一団が現れ、原始人たちは逃げ惑う。兵士の顔がアップされると、それはゴリラだった。テイラーたちも逃げる。が、原始人とともに捕縛され、喉を傷めて声が出ない。テイラーは獣医のもとへ。この医者がチンパンジーなのだ。
 未知の惑星のはずなのに、服を着た猿たちが英語をしゃべり、彼らが使う文字もなぜか英語。ゴリラの兵士たちは地球と同じ馬に乗っている。そこは猿が支配する世界で、人間は言葉を持たない下等動物である。
 喉が回復したテイラーは、自分はこの星の人間とは違い、別の惑星から来た知的人類であると説明するのだが、猿たちはしゃべる人間を恐れ拒絶する。
 チンパンジーの科学者夫婦を説得して、禁断地区へと逃れると、そこには古代人の遺跡が。そしてラストシーンはあまりに有名で、砂浜に埋もれた自由の女神。ここは未知の惑星ではなく、はるか未来、人類が退化した地球であった。だから猿が英語をしゃべっていたのか。

 

猿の惑星/Planet of the Apes
1968 アメリカ/公開1968
監督:フランクリン・J・シャフナー 原作:ピエール・ブール
出演:チャールトン・ヘストンロディ・マクドウォール、キム・ハンター、モーリス・エバンス