シネコラム

第6回 続・夕陽のガンマン

飯島一次の『映画に溺れて』

第6回 続・夕陽のガンマン

昭和四十二年十二月(1967)
大阪 上本町 上六映劇

 

 私が初めてひとりで映画館に行ったのは、高校に入学してからで、それまでは父か、あるいは祖母と観に行った。祖母は子供向きのディズニー作品にも連れて行ってくれたが、洋画好きの父は、自分の観たい作品に私を同行させることも多く、中には子供にはあまり理解できないような大人向きの映画もあった。タイトルは思い出せないが、きわどいラブシーンの出て来る映画もあった。

 父と最後に観た映画がマカロニウエスタンの『続・夕陽のガンマン』で、中学二年の冬休み、大晦日である。中学生の私でも、これはけっこう楽しめた。
 アメリカの南北戦争が背景で、いいやつ、悪いやつ、汚いやつの三者が隠された軍資金をめぐって、争うというもの。
 いいやつが名無しのクリント・イーストウッド、悪いやつが『夕陽のガンマン』では善玉の大佐だったリー・ヴァン・クリーフ、汚いやつが『荒野の七人』で山賊の親分だったイーライ・ウォラック。もちろん、それを知るのは後になってから。 今でも印象に残っている場面。向こうから兵士の一団がやってくる。灰色の軍服が南軍で青が北軍アウトローたちはどっちつかずの賞金稼ぎだが、灰色の軍団を見て、とっさに南軍側の死体から軍服をはぎとって身にまとい、一団を迎えいれる。と、兵士たち、砂ぼこりを払うと軍服は青の北軍だった。これには笑った。

 『用心棒』の三船敏郎は『椿三十郎』『座頭市と用心棒』、さらに稲垣浩監督の『待ち伏せ』でも同じような素浪人を演じたが、イーストウッドもまた、『荒野の用心棒』『夕陽のガンマン』『続・夕陽のガンマン』まで同様の名無しのガンマンでポンチョの衣装も同じであった。ただし、物語は三作ともつながってはおらず、『続・夕陽のガンマン』は『夕陽のガンマン』の続編ではない。
 この映画の主題曲は有名で、他の映画でもときどき、使われている。

 

続・夕陽のガンマン/Il buono, il brutto, il cattivo
1966 イタリア/公開1967
監督:セルジオ・レオーネ
出演:クリント・イーストウッドリー・ヴァン・クリーフイーライ・ウォラック

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