今日、9月12日は――
中里介山の長篇時代小説『大菩薩峠』が連載開始された日です。
大正2年(1913年)のことでした。
『大菩薩峠』は、「都新聞」に掲載された[甲源一刀流の巻]から始まり、「大阪毎日新聞」「東京日日新聞」「隣人之友」「國民新聞」「読売新聞」で連載され、昭和16年(1941年)8月20日に書き下ろされた[椰子林の巻]が最後の回となった、全41巻の大作です。
昭和19年(1944年)4月28日、介山が亡くなったため、未完となってしまいました。
舞台は幕末の安政5年(1858年)、 音無しの構えの遣い手・机龍之助(つくえりゅうのすけ)が、武州御嶽神社の奉納試合で甲源一刀流師範・宇津木文之丞を斬殺し、逃亡。敵討ち旅に出立する文之丞の弟・兵馬だったが――。
ここから物語が広がっていき、新選組・天誅組などの実在組織や、土方歳三・近藤勇・島田虎之助ら実在人物などが無数に登場、多くのサブストーリーが複雑に絡み合い、慶応3年(1867年)の秋頃までの約10年間が描かれています。
虚無感を抱いた人間を主人公とし、登場人物たちそれぞれの流転の人生を、仏教思想に基づいて描いた作品で、「大衆小説の先駆的作品」と讃えられた『大菩薩峠』でしたが、介山本人は「大乗小説」と称していたそうです。
[平成30年(2018)9月12日]掲載