シネコラム

第569回 華麗なる対決

飯島一次の『映画に溺れて』

第569回 華麗なる対決

昭和四十七年十月(1972)
大阪 道頓堀 松竹座

 

 ブリジット・バルドーの主演作を最初に観たのはフランス製の西部劇『華麗なる対決』だった。一九七二年であり、それ以前のバルドー映画はほとんど映画館で観る機会がなかったし、その後の作品は公開されず、バルドー自身が一九七三年に女優を引退してしまう。
 もちろん、ブリジット・バルドーといえばBBの愛称で、マリリン・モンローのMMやクラウディア・カルディナーレのCCとともにセクシー女優のイメージにもつながる。
 BBバルドーがCCカルディナーレと共演した『華麗なる対決』は西部劇でありながら、フランス移民が開拓した町が舞台で、保安官のマイケル・J・ポラード以外はみんなフランス語を話す艶笑活劇である。
 黒づくめの列車強盗は長女ルイーズを首領とする五人姉妹たち、町の暴れ者サラザン一家は姉のマリアが四人の弟を率いている。バルドーのルイーズとカルディナーレのマリアが寂れた農場の所有をめぐって対立する。
 悪徳医師が仲間を殺して奪った農場の権利証を列車強盗のルイーズが手に入れ、農場から石油が出ることを知ったマリアが土地を買い取ろうとする。最後はルイーズとマリアが殴り合いの乱闘の後、仲直りし、妹たちと弟たちがそれぞれ結ばれて、十人組の強盗団となり、間抜けな保安官はバッジを捨てて、フランス語しか通じない町を去る。
 列車強盗、馬上のガンマン、殴り合いなど西部劇らしい要素はあるにはあるが、ほんのつけたし。セクシーなシーンはごくわずか。お色気たっぷりのバルドーとカルディナーレの対決が見られただけが儲けものという代物。
 話はそれるが、古い艶笑小咄を連想した。男がすごい夢を見たと友人に話す。どんな夢かと聞くと、ベッドの横に全裸のブリジット・バルドーが寝ていたというのだ。すごいというと、男は反対側にはクラウディア・カルディナーレがやはり全裸で寝ていたという。裸のBBとCCに挟まれて寝ているなんて、ますますすごい夢じゃないかと感心すると、男はつまらなそうにいう。でも夢の中では、俺がマリリン・モンローなんだ。

 

華麗なる対決/Les Pétroleuses
1971 フランス・イタリア・スペイン/公開1972
監督:クリスチャン=ジャック
出演:ブリジット・バルドー、クラウディア・カルディナーレ、マイケル・J・ポラード、ミシュリーヌ・プレール

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