シネコラム

第533回 ロボジー

第533回 ロボジー

平成二十三年十二月(2011)
日比谷 東宝試写室

 

 かつてのSFの世界に頻繁に登場するのがロボットで、現実には工業用ロボットが実現化しているが、『鉄腕アトム』や『AI』のような人間の形をして二本足で歩くロボットは二十一世紀になってもまだまだ難しい。
 地方都市にある家電メーカー。社長命令で三人の社員がロボットを作っている。一週間後のロボット博覧会に出品する二足歩行型のロボット「ニュー潮風」。ロボット博の様子はTVで放送されるので、社名を大きく描いたロボットが画面に出れば、会社の宣伝になる。
 ところが、これが不注意から壊れてしまい、窮地に立った三人が考えたのが、ロボット博当日だけ中に人間を入れてごまかすということ。
 着ぐるみショーのキャラクターアルバイト募集と偽って、ロボットに入る人間をオーディションしたら、ぴったりだったのが鈴木さん。定年退職した七十三歳。妻とは死別、娘は東京に嫁いでいるので、独り暮らしの暇な老人。新聞の折込チラシを見てオーディションを受け、合格。
 ロボット博には全国から様々なロボットが集まったが、鈴木さんの人間らしい動きで「ニュー潮風」は大評判、その後、各地の余興に呼ばれ、一日だけでは済まなくなる。老人クラブの演芸会では小さな役しかつかなかった鈴木さん、大人気で脚光を浴びるロボット役に大はりきり。
 どう考えてもばれそうなのだが、ばれない。まさか中に人が入っているなんて誰も思いもしないのだ。理工系大学のロボット研究部が「ニュー潮風」に興味を持ち実用化に協力する。
 鈴木さんを演じるのが五十嵐信次郎という俳優。すばらしい名演技。でも、そんな人いたのだろうか。知られざる新劇のベテランかなにか。と思って、よく観たら、これがミッキー・カーチスだった。うまいのは当たり前。大ベテランだから。

ロボジー
2012
監督:矢口史靖
出演:五十嵐信次郎ミッキー・カーチス)、吉高由里子濱田岳川合正悟川島潤哉田畑智子和久井映見小野武彦