シネコラム

第522回 ヤング・シャーロック ピラミッドの謎

飯島一次の『映画に溺れて』

第522回 ヤング・シャーロック ピラミッドの謎

昭和六十一年三月(1986)
新宿 新宿ピカデリー

 

 イアン・マッケラン主演『Mr.ホームズ 名探偵最後の事件』は老後のシャーロック・ホームズを描いているが、それとは逆に、まだ世に出る前の少年ホームズが活躍するミステリが『ヤング・シャーロック ピラミッドの謎』である。
 地方からロンドンの寄宿学校に転校したばかりのワトスンは、同室の背の高い少年に挨拶し、名乗ろうとすると、彼は遮る。
「僕が当てよう。君の名前はジェームズ・ワトスン、父親は医者、君は医者志望。そして甘いお菓子が大好きだ」
 ワトスンは驚く。どうしてわかったの。名前はジョン・ワトスンだが、それ以外は当たっている。
「鞄にJ・ワトスンの名札。Jはたいていジェームズかジョンだ」
 次々に種明かしする少年はシャーロック・ホームズと名乗る。ワトスンはこの風変りな少年と仲良くなる。
 その頃、ロンドンで奇妙な変死事件が続く。恐怖の幻覚を見て、二階の窓から飛び降りたり、走る馬車に飛び込んでひかれたり。ホームズ少年はロンドン警視庁の若い刑事レストレードに会い、捜査を勧めるが、一笑にふされる。
 敬愛する引退した老教授がやはり幻覚のせいで自死し、ホームズはワトスンとともに邪悪な陰謀の謎に挑む。
 この映画の本編終了後のエンドクレジットがやたら長くて、途中退席する観客が多かった。スタッフやキャストの名前がえんえんと続く間、雪道を馬車が走る映像が流れる。そして……。途中で映画館を出たお客さんは最後のおまけを見られずに残念でした。
 ホームズ少年を演じたニコラス・ロウは後に『Mr.ホームズ 名探偵最後の事件』にちらっと出演している。どこで出てくるか、見つけるのも映画の楽しみである。

 

ヤング・シャーロック ピラミッドの謎/Young Sherlock Holmes
1985 アメリカ/公開1986
監督:    バリー・レヴィンソン
出演:ニコラス・ロウ、アラン・コックス、ソフィー・ワード、アンソニー・ヒギンズ、スーザン・フリートウッド、フレディ・ジョーンズ、ナイジェル・ストック、ロジャー・アシュトン=グリフィス