シネコラム

第520回 NOPE ノープ

第520回 NOPE ノープ

令和四年九月(2022)
府中 TOHOシネマズ府中

 

 UFOを信じるか、信じないか。という議論はそもそもおかしいと思う。UFOとは未確認飛行物体の略語であり、なんだかよくわからないものが空を飛んでいるだけなのだ。それは人工的な気球や自然現象の流れ星や鳥のような生物かもしれない。
 しかるに多くの人たちがUFOといえば宇宙人と思い込んでいる。宇宙人の存在なんて信じていない人たちまでがそうなのだ。UFOとは宇宙人ではなく、確認できないものなのだから、信じるも信じないもない。
 そもそも空飛ぶ円盤が宇宙人の乗り物と結びついたのは映画やTVの宇宙SFが大量に作られてからである。私は宇宙人が登場する『スタートレック』や『ギャラクシークエスト』や『宇宙人ポール』は大好きだが、宇宙人の存在を強く主張する人たちと議論はしたくない。楽しむことと信じることははっきりと区別すべきだと思っている。
 だから『NOPE ノープ』のUFOはまさにUFOであり、ユニークでなのである。
 カリフォルニアで牧場を営む黒人の親子。映画の撮影に馬を貸し出すのが主な商売だが、ある日、父親が空からの落下物に直撃され、病院で息を引き取る。
 牧場経営は赤字続きでうまくいかず、息子は落ち込んでいる。父の葬儀で帰ってきた妹が牧場上空に浮かぶ雲の異変に気付く。雲の中になにかがある。
 それがUFOなら、撮影してTVに売り込めば大金になると兄に勧め、大型電気店で何台もカメラを買い込む。カメラ設置に来た店員が怪しみ、結局UFOの撮影と知り、協力する。さてUFOの正体は。
 これにウエスタンパークを運営する隣人の元TV俳優が絡み、彼が子役時代のチンパンジーのエピソードが挿入され、最後はUFOとの対決がホラー色豊かに展開する。
 妹役のキキ・パーマーが全体をコメディ調でひっぱるので、最後までどきどきしながら楽しめる。懐かしい悪役のマイケル・ウィンコットがいい役で出ているのもうれしい。

NOPE ノープ/Nope
2022 アメリカ/公開2022
監督:ジョーダン・ピール
出演:ダニエル・カルーヤ、キキ・パーマー、ブランドン・ペレアマイケル・ウィンコット、スティーブン・ユァン、キース・デビッド