赤佐汰那の書見台 赤佐汰那

「戦国や江戸って、どんな時代なの?」「昔の人たちが喋っていた言葉とか、食べていた料理とか、着ていた服とか、まったく想像できない⁉︎」「時代劇はどこまで本当なんだろう?」などなど。
 とどのつまり、「歴史時代小説をもっと愉しみたい!」、常々そう思っているあなたのために贈るのが、このコーナーです。
 歴史時代作家を目指す人たちも必読、デビューの近道となるかもしれませんよ!

第20話

誰でも分かる歴史学の勘所
『独学で歴史家になる方法』



『独学で歴史家になる方法』
 礫川全次/著

 歴史時代小説を書こう/読もうとする皆様の多くは、歴史に興味のある方が多数派なのではないかと思っている。こう言っては何だが、現在、小説は供給過剰なまでに世に出ており、自分のための物語かと疑いたくなるような小説に出会うことさえある。そんな環境の中で、わざわざ歴史時代小説というフィールドに何らかの興味関心があるということは……ということである。もちろん歴史時代小説はあくまで小説なのだが、現実問題として歴史への興味に支えられているジャンルであるといっても過言ではない。そのために歴史時代小説を書く際には下調べが欠かせないわけであるし、読者もまた、作者が史料を駆使して構築した歴史観や世界観に酔いしれる。特に歴史時代小説を書こうとなった時には、ある程度のリサーチ能力が必要とされるのである。
 さて、前置きが長くなってしまった。今回紹介するのはこちら、『独学で歴史家になる方法』礫川全次/著、日本実業出版社)である。在野史家という肩書でもって活躍なさる著者による、歴史家入門書である。
 本書の美点は、実に論旨が明快で平易なところである。というのも、本書は“これまで歴史学に触れてきていないが、定年退職した暁には自分の興味あるテーマを調べてみたいと考えている定年直前の方”や、“自分史を書いてみたいと考えている人”に寄り添った内容だからだ。本書は候文を読めるようにしましょう、などといきなりハードルを上げてこない。あくまで歴史学に関わったことのない読者を想定し、歴史学という学問の勘所や、学説や史料の摂取や料理の仕方を丁寧に述べている。
 もちろん、本書は在野での研究の道を勧める本であって、小説の書き方をレクチャーする本ではない。だが、歴史というアリモノから物語を作り上げる際、どうやって「歴史」にコミットしていくか、どうやって情報を整理していくのか、どうやって己の論を立てて行くのか、どうやってファクトチェックをしてゆくのかは重要な関心事である。
 もちろん、歴史時代小説を書きたいあなたにとって、本書が物事のすべてを照らす松明なりえることはないだろう(繰り返すが、本書はあくまで在野の歴史家になりたいと志している人のための入門書であり、歴史時代小説を書きたい人に寄り添った本ではないのだから当然である)。だが、歴史へのコミットがうまく行かない、うまく歴史観が構築できないというあなたは、もしかすると自分流の調査法に何らかの問題があるのかもしれない。そんなあなたにおすすめの一冊である。

発売元:日本実業出版社
刊行日:2018年11月20日
価格:1,800円+税
判型:単行本ソフトカバー

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[平成30年(2019)1月27日]
赤佐 汰那

赤佐 汰那

あかさ たな

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