「戦国や江戸って、どんな時代なの?」「昔の人たちが喋っていた言葉とか、食べていた料理とか、着ていた服とか、まったく想像できない⁉︎」「時代劇はどこまで本当なんだろう?」などなど。
とどのつまり、「歴史時代小説をもっと愉しみたい!」、常々そう思っているあなたのために贈るのが、このコーナーです。
歴史時代作家を目指す人たちも必読、デビューの近道となるかもしれませんよ!
第11話
情報の確度を判断するのは?
『図書館に訊け!』
『図書館に訊け!』
井上真琴
正直、この本はあまり紹介したくない、というのが包み隠さぬ本音である。
世の中にはあまりに有用すぎるがゆえに、自分だけのものとして囲い込んでおきたい情報や本というものが存在するものだが、この本は非常に手に入れやすく(場合によれば書店さんの棚に差してある可能性すらある)しかもお値打ち価格と来ている。出来れば秘匿したいと二の足を踏んでしまった所以である。だが、本連載は「歴史・時代ものを書く/読むにあたって有用な人文書を紹介する」というスタンスであるからして、多少手の内は明かさねばなるまいと考え直してこうして紹介するものである。
と、ハードルを上げに上げて紹介するのはこちら『図書館に訊け!』(井上真琴/著、ちくま新書)である。これをお読みの皆様はかなり図書館をご利用のことと思うが、本書は司書である著者が図書館の持つポテンシャルを極限まで引き上げるための方法を紹介してくれている。
とは申せ、大学などで図書館学(≒司書の養成講座)を学んだ人からすればあるいは常識に含まれることの羅列であるかもしれない。例えば、「目録の活用」のくだりなどは他の学問を修めた方も指導を受けたことだろう。
しかし、本書はさまざまな学問分野の知識を扱う司書たちがどのように情報を整理し、どのように序列立てしているのかが明確に述べられている。特に参考になるのは、「情報の確度」について司書たちがどのように判断しているか、というくだりであろう。恐らくこれをお読みの皆様は歴史に関して一家言お持ちであろう。しかし、それでも歴史すべてのトピックスに通暁している人はそう多くはないはずだ。あまり興味がない分野やこれまで勉強する機会のなかったテーマに関しては知識が薄いゆえに、目の前に提示された説や情報をどう扱うべきか困るということはよく起こる。こういった事態に日々直面している司書たちがどのように情報の確度を判断しているのかは本書をご参照いただきたいが、司書たちが培ってきたノウハウは、現場で培われたものであるだけに実戦的である。
現在、学問分野では学際化が叫ばれて久しい。歴史学に引き寄せれば、年代測定法による史料の真贋判定や統計学的手法の導入などは一般化しているといってもいい。仮に歴史学を専門と決めたとしても、他の学問についてもある程度把握しておかねばならないともいえる。本書はそんな現代において学問を修めたい、あるいは小説を書きたい、はたまた本の情報をうまく整理したいあなたにぜひ一読をお勧めするものである。
刊行日:2004年8月6日
価格:820円+税
判型:ちくま新書