寂れた宿場を二分する勢力、〝鬼熊の五呂蔵一家〟と〝うわばみの源次郎一家〟。半年ほど前から仕切りをかけたにらみ合いが続いていたが、ついに今日、往来のまん真ん中で大立ち回りがはじまろうとしていた――。と、そこへ現れた凄腕の浪人。助太刀に来てくれと頭を下げるふたりの親分に、浪人が出した意外な条件とは?
第1話
スイーツ侍
宿屋の者、茶店の者──宿場の誰もが、ぴったりと戸を閉め、時がすぎるのを待っている。
往来をはさんで、二つの集団がにらみ合っていた。
それぞれ三十人ほどであろうか。むさ苦しい男たちである。
背も低く、足も短いが、筋肉だけはたっぷりとついている。字は読めないが、足は速い。酒と
鬼熊の
「そろそろ、わしに頭ァ下げてもいいんでねが。のう、源次郎。いいんでねが!」
五呂蔵がいった。鬼熊などと強そうに名乗ってはいるが、ひょろりと
「ねぼけるでねえ! おめこそ、さっさと
対する源次郎は、太りすぎで朝が弱く、近眼で腰痛もちであった。
「おめ、
「やっかまし!」
「昔の仲間と思って、優しくしてればつけあがってよ!」
「おめみてえに、有線のC27しか聞かねえやつは、仲間なんかでねえ!」
「あれで朝起きるのがいいんでねが!」
「わがんね!」
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第1話: スイーツ侍 (1/6)
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