第3話
村祭りの悲劇〈二〉
四
翌朝、
「しかし
「そうだとも、
巫女が鬼に殺されたのは間違いだといい、獣に食われたのだと、沖土の言葉を信じようとしない。
「その油断が命取りだ。鬼の
沖土がシキの名を出すと、また静まりかえった。
皆顔が青ざめ、不安に駆られた目を、沖土に向けている。
「どうすりゃいい」
「早く逃げないと、鬼に喰われるぞ」
「村を出て、
「そうだ、行くところなんかねぇ」
「鬼が出たのだぞ!」
「皆落ち着いて聞いてくれ」沖土が、騒ぐ村の衆をなだめる手つきをして制した。「今朝早く、都に使いを走らせた。おりよく
沖土の言葉に、皆良い顔をしない。
「そんなこといわれてもな、もうすぐ冬だ。今のうちに猟をして、獲物を米に替えておかねば、食い物が春までもたねえぞ」
村の者から一目置かれている
「安心せい!」
「おやかた様……」家来が腰を浮かし、為武をたしなめた。
それを
「助けなどいらぬ。もし鬼が出たら、わしらが退治してやる。この村は、わしらの手で守ってみせる」
蘇芳の勇ましさに、村の若者が再び声をあげた。
為武は
沖土が
「おまえたちだけで何が出来る。素直に助けを請わぬか」
「頼ったら、村にずっといてくれるのか」
蘇芳にいわれて、為武は返答に困った。大原の里は隣の豪族と争いをしている最中であるため、ずっと留守をするわけにはいかぬからだ。こうしている間にも、為武の留守を狙って攻めて来るかもしれぬと、気がかりなのだ。
「二日三日なら、どうにかなる」為武が、半ば負け惜しみでいう。
蘇芳はそれみろといわんばかりに鼻で笑うと、
「ならば、いますぐ退治しに行こう」
「何、今すぐじゃと」為武が、蘇芳に顔を向けた。
「鬼は山に潜んでいるはずだ。手を貸してくれるなら、今すぐ行こうではないか」
「面白い。乗った」為武が立ち上がった。
「行く気がある者は、仕度しろ」
蘇芳は、沖土や