本タイトルは、江戸時代後期に生きた曹洞宗の僧侶である良寛法師の言葉、「優游復優游 ゆうゆうまたゆうゆう」にちなんで、先生ご自身が名付けられた。
 越後国の産で、生涯放浪の多かった良寛法師は、歌人でもあり、漢詩人でもあり、また書家でもあった。
 故郷を同じくする作家の漫筆録。

第5話

これがくせもの

 新聞でおもしろい見出しをみつけた。
桐生きりゅう 嵐で走れず」(朝日新聞、2016年4月2日)
 本のタイトルみたいだ。暗号のようでもある。暗号と言えば
「秋の日の ヴィオロンの ためいきの ひたぶるに 身にしみてうら悲し」うえ びん/訳
 というヴェルレーヌの詩があった。連合軍のノルマンディー上陸作戦、決行の合図。連合艦隊の真珠湾攻撃は
「ニイタカヤマノボレ」
「トラトラトラ」
……悲惨さとはうらはらな情緒、これがくせもの。

平成28年(2016)4月7日

坂岡 真

ささおか しん

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