本タイトルは、江戸時代後期に生きた曹洞宗の僧侶である良寛法師の言葉、「優游復優游 ゆうゆうまたゆうゆう」にちなんで、先生ご自身が名付けられた。
越後国の産で、生涯放浪の多かった良寛法師は、歌人でもあり、漢詩人でもあり、また書家でもあった。
故郷を同じくする作家の漫筆録。
第14話
鋏
ヘンリー・ダーガーのことを新聞で読んだとき、生前に暮らした部屋を再現したらしい部屋の雑然とした雰囲気が一枚の絵画のように感じられ、胸の詰まるような息苦しさと同時に喩えようもない安堵と深い感動をおぼえた。
その記事を読んだときのメモに「底知れぬ孤独のなかで孤独を感じずに生きた男」と記している。
……ヘンリー・ダーガー:1973年シカゴの老人ホーム、81歳の身寄りのない老人がひっそりと世を去った。1万5千頁を超す壮大な物語とドローニングを遺して……(記事より)。
このはなしは、たったひとりで塔を築いた郵便配達夫シュヴァルの理想宮や、亡くなった直後に価値を見出された画家モディリアニを連想させる。
何故、このはなしを記したかというと、とある著名な女流作家の自著紹介でダーガーからインスピレーションを得たという記事を読んだからだ。
インスピレーションを得るべく新聞記事をスクラップ……というような意味の記述もあったので、おそらく、同じ記事を鋏で切ったのではないかと。
平成29年(2017)3月2 日