本タイトルは、江戸時代後期に生きた曹洞宗の僧侶である良寛法師の言葉、「優游復優游 ゆうゆうまたゆうゆう」にちなんで、先生ご自身が名付けられた。
越後国の産で、生涯放浪の多かった良寛法師は、歌人でもあり、漢詩人でもあり、また書家でもあった。
故郷を同じくする作家の漫筆録。
第11話
あしながおじさん
目白台の日無坂上から見下ろした風景も見事なY路だ。
そういえば、横尾忠則さんは高倉健さんをモチーフにしていたな。
健さんといえば『冬の華』という映画があった。倉本聰脚本。
小池朝雄、峰岸徹、田中邦衛、小林稔侍……池上季実子。綺羅星のごとき錚々たる配役。チャイコフスキーのピアノコンチェルトが響く名曲喫茶で、出所したばかりの不器用なヤクザ(健さん)は自らの手で殺した兄貴分(池部良)の娘(池上)に声を掛けられる。
「あしながおじさんですよね」
「……」(健さんは償いのために名を隠し、刑務所のなかから娘に奨学資金を援助していた)
渡世の義理で人を殺し、業に縛られるヤクザの哀切。そして繰りかえされる非情な宿命。
何やら、おもいだすだけで泣けてくる(敬称略)。
平成28年(2016)7月1日