本タイトルは、江戸時代後期に生きた曹洞宗の僧侶である良寛法師の言葉、「優游復優游 ゆうゆうまたゆうゆう」にちなんで、先生ご自身が名付けられた。
 越後国の産で、生涯放浪の多かった良寛法師は、歌人でもあり、漢詩人でもあり、また書家でもあった。
 故郷を同じくする作家の漫筆録。

第1話

涅槃会は西行忌

 父もそうなのだが、3月に逝く身寄りが多い。
 それゆえか、桜が咲くと少し悲しい気分になる。
 桜もみずに逝ったのだなあと、しんみりしてしまうのかも。
 近所にも桜はけっこう多いので、突如として変わる情景が歳の経過の節目になり、またひとつ死に近づいたなどとおもうこともある。ふと、西さいぎょう法師の句が浮かんだ。
 ……願わくは花のもとにて春死なん そのきさらぎのもちづきのころ――はんは西行

平成28年(2016)3月13日

坂岡 真

ささおか しん

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