シネコラム

第568回 シティ・スリッカーズ

飯島一次の『映画に溺れて』

第568回 シティ・スリッカーズ

平成四年五月(1992)
池袋 文芸坐

 

 四十代を目前にしたミッチ、フィル、エドの三人。仕事への意欲もなくし、家族との関係も惰性である。気心の知れた親友三人で年に一度、イベントを計画して思い切り遊ぶ。それだけが生きがいで、今年は牛の群れを移動させるカウボーイ体験ツアーに参加。つまり、現代版西部劇である。
 ツアー客はたまたたま友人にキャンセルされた美人ひとりを含む八人の都会人。それにコック、二人の下品な牧童、牧童頭の老カウボーイが加わって、牛を追って行く。八人は参加料を払って牛追いの労働をするわけである。
 ビリー・クリスタル演じるミッチは老カウボーイから人生の秘訣を教わる。西部劇から抜け出してきたような老人は指一本を突き出して言う。
「人生の秘訣はこれだ」「指ですか」「いや、ひとつということだ」「ひとつとは何です」「自分で考えろ」
 老カウボーイは途中で心臓発作のために死に、コックは骨折し、二人の牧童はヘレン・スレイターの美女にセクハラまがいのちょっかいを出し、三人組にとっちめられて逃亡する。
 ミッチと仲間たちは全員素人ながら、牛を目的地まで移動させる。感動の内に成功した牛追いだったが、牛たちは精肉業者に売られる運命だった。三人はこのイベントに参加して、少しだけ成長する。  自らを滅び行く種族という老いたカウボーイ役のジャック・パランスはさすがに存在感が素晴らしく、続編の『シティ・スリッカーズ2』にも死んだカウボーイの双子の役で出演していた。
 ミッチの息子を演じているのが子役時代のジェイク・ギレンホールであった。

 

シティ・スリッカーズ/City Slickers
1991 アメリカ/公開1992
監督:ロン・アンダーウッド
出演:ビリー・クリスタル、ダニエル・スターン、ブルーノ・カービー、ジャック・パランス、ヘレン・スレイター、パトリシア・ウェティグ、ノーブル・ウィリンガム、デヴィッド・ペイマー、ジョシュ・モステル、ジェフリー・タンバー、ジェイク・ギレンホール

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