一度は隠居したものの、乞われて尼崎藩の江戸家老に戻った塩谷隼人は、シリーズ第三弾となる本書で、最大の困難を迎える。なんとお忍びで市中を歩いていた徳川十一代将軍家斉が、船宿『海ねこ』の仲居のお琴を見初めてしまったのだ。しかしお琴は隼人と、互いに想い合う仲である。隠然たる勢力を持つ小納戸頭取・中野播磨守の思惑も絡まり、大奥へと連れ去られたお琴。彼女を助け出すため、隼人は大胆な行動に出る。
今までのシリーズで隼人は、尼崎藩の江戸家老として、さまざまな騒動にかかわってきた。だが今回は、愛する女を取り戻そうとする、ひとりの男として闘うことになる。そのため彼は藩に迷惑をかけぬため、ひとりで動く。孤剣を引っ提げ、強敵と斬り合う、隼人の雄姿が恰好いい。
でも、頼もしき仲間たちが、隼人を見捨てるはずがない。いつものメンバーが集結してのクライマックス、そしてラストの予想外の勝負と、波乱のストーリーを堪能した。満足である。
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